物流へのしわ寄せ是正急務

燃料価格の高止まりをはじめコスト上昇に対し販売価格転嫁が進まない。帝国データバンク(TDB)の調査によると、100円のコストアップで売価への反映は44円にとどまるという。最も価格転嫁が進まないのはトラック運送業など運輸・倉庫業界で、100円のコスト増の売価反映は20円と業界間の格差もみられる。
価格転嫁対策では、昨年末に関係省庁で策定した〝パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化対策〟のもと、省庁連携によりサプライチェーン全体で取引適正化の流れをつくるべく施策を打ち出している。公正取引委員会が〝買いたたき〟行為を明確にし、より踏み込んだ対応をとるなど、中小零細が多くをしめる物流業界においてもその〝しわ寄せ〟是正へ大きな後押しになる。
しかし3-6日に行ったTDBの同調査からは物流関係の転嫁対策は依然として厳しい状況にあることが分かる。
価格転嫁率が全体平均44・3%に対し、運輸・倉庫は19・9%。「多少なりとも価格転嫁できている」企業は全体73・3%に対し運輸・倉庫は56・5%、「全くできていない」は全体15・3%に対し31・8である。
トラック関係の事業者からは「下請けの下請けでは価格転嫁など到底かなうものではない」という多重下請け構造の問題や「大手荷主に要請しても、代わりの運送会社はいくらでもいると言われ、転嫁してもらえない」といった買いたたき被疑、「行政の指導に基づく燃料サーチャージ導入を提案するが、荷主の理解を得られない。物流コスト増に伴う値上げとよく耳にするが、自社は全く価格転嫁できていない」など従前からの業界が抱える課題が転嫁対策の大きなハードルとなっている。
燃料や原材料費の高騰に加え、ウクライナ情勢や円安の進行など様ざまな要因で仕入れコストが上昇している。このコスト上昇はとどまる気配がみられない状況であり、TDBでは「大部分を転嫁できている企業でも今後さらなる価格転嫁が必要となる事態も想定される」とみている。
未だ転嫁率2割の運輸・倉庫業界はさらに厳しい舵取りを迫られる。
国は転嫁円滑化施策で様ざまな措置を講じるが、とりわけ中小零細事業者はこのコスト圧力が直接的に経営を圧迫する。
トラック運送業の倒産件数がここにきて増加傾向にある。適正な運賃・料金の収受が厳しい状況が続けば体力は疲弊する。即効性のある施策が急がれる。