物流事業者の負荷に理解を

コロナ禍で社会的インフラとしての物流の重要性が広く認知されてきたことは、サプライチェーンにおける商慣習見直しを一気に推し進める好機である。
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)が行ったコロナの影響に関するアンケート調査では、荷主・物流企業の約3割が納品頻度やリードタイムの延長など「取引先との調整によるサービスレベルを見直した」と回答し、その多くがコロナ収束後も継続するという。
短納期発注や発注内容の変更などは物流事業者の長時間労働につながる。こうした課題に対し、食品業界では小売りの納入期限の緩和など見直しが進んでいる。
さらに感染拡大により物流機能の位置付けが高まるこの状況下こそ、物流事業者への負荷を理解してもらい、商慣習見直しや取引適正化への動きを強くする必要がある。
JILSの調査は今回が3回目だが、注目したいのは前回の6月調査と比較して、荷主企業の調達領域、販売領域で「影響がない」と回答した企業がいずれも増えていることだ。
感染再拡大で経済活動は冷え込むが、この間の様ざまな対応策を通じ柔軟に対応できる荷主企業も増えていることが伺える。その背景には物流がしっかり機能していることを浮き彫りにしているといえるだろう。
今回「サービスレベルを見直した」企業の約7割はその成果があったとし、8割以上の企業はコロナ収束後もこの見直しを継続する考えだ。物流事業者からは自社、発着荷主いずれからもこの要求・提案があったとの回答もある。コロナ対策は長期戦の様相を呈するが、サプライチェーン全体で危機意識を共有する流れにあり、持続可能な物流への取り組みを定着化させたい。
緊急事態宣言で不要不急の外出自粛が要請され、経済活動の側面からは個人消費の減退が懸念される。一方で今のところ前回のような日用品や食品の買い占めパニックは見られないが、物流に負担がかからないよう、消費者も巻き込みながら過度なサービスを見直す訴え掛けも必要だろう。
また、JILS調査では前回に続き「トラックが手配しやすくなった」との回答も多く、「標準的な運賃への移行を検討していたが、荷量減少で当分の間交渉すらできない」との指摘もある。
物流事業者の負荷は労働力だけでなく、コスト面についてもしっかり理解を得るよう働き掛けたい。