荷主含め総合的な戦略を

5月の省エネ法改正で輸送事業者の非化石エネルギーへの転換に向けた取り組みが新たに求められることから、国土交通省はその目安となる判断基準案を年内にも取りまとめる。先月設置した検討会で関係団体のヒアリング、特定輸送事業者へのアンケートや意見交換を通じ調査審議する。
具体的には非化石エネルギーへの転換にあたり輸送事業者が努めるべき事項で、技術水準その他事情を勘案するとともに各事業者の目安となる目標設定も検討する。
ヒアリングの中で全日本トラック協会は予てから指摘してきた次世代車両の価格低減やインセンティブ拡充など課題にあげながら、発着荷主を交えた議論や総合的な戦略の必要性を求めている。
全ト協によると事業用貨物自動車の電動車導入実績は2021年3月末でハイブリッド1万1651台、EV625台の計1万2276台、保有台数割合は2・76%。商用車も次世代自動車の導入機運が高まるが、トラックはまだこれから。
全ト協が3月に策定した「トラック運送業界の環境ビジョン2030」では、政府のグリーン成長戦略による電動商用車の指標に沿って車両総重量8t以下の小型車で30年までに新車販売25%としており、保有台数割合では10%である。
一方、環境施策全般でとらえるとトラックは輸送効率化の推進によるところも大きい。デジタル化の進展もありそこでは発着荷主とも認識を共有して臨む必要がある。
荷主側もカーボンフリーに取り組むなかでは輸送関係のCО2削減が大きな位置を占める。運送事業者も荷主側の環境施策に「何ができるか」「どう応えるか」、とくに中小事業者は頭を悩ませる。導入コストとともにこれら荷主との連携の在り方も問われてくる。
資源エネルギー庁主導で進めている荷主に対する同判断基準案の検討とも連携するとしており、ここは深掘りした議論が求められる。
来年度概算要求ではエネルギー対策特別会計で〝再エネ+電動車〟を活用した助成事業を事業用自動車にも適用させる考え。電動車の〝動く蓄電池〟の活用や災害時の非常用電源など物流に大きな期待が寄せられる。
電動車の普及とともに充電設備などインフラの積極的な配置・整備も同時進行で求められてくる。全ト協も意見したが、そこでは荷降ろし・荷積み作業時の充電など、発着荷主も巻き込んだ総合的な戦略が必然だ。