商慣習を変える潮流に

トラック運送業の改善基準告示見直し案がまとまった。8日の作業部会で労働者、使用者、公益の各代表委員が報告案を了承、合意を得た。昨年4月の初会合から計10回と精力的に議論を深めてきた。バス・タクシーは3月に取りまとめたが、トラックは調査を2度行った上でより実態に即し検討を重ねた。
厚生労働省は年内にも改善基準告示を改正、2024年4月施行に向け運送事業者は勿論、荷主や関係先へしっかりと理解、周知を徹底させるとともに、新たな基準が実効性あるものとなるよう一層の監督指導が求められる。
各項目とも労使譲れない主張があったが、拘束時間の「年3300時間」、「時間外・休日労働月100時間未満」は〝原則・努力目標〟でもあるが、見直しの根本である過労死防止の観点から要点をしっかりおさえた。また、1日の休息期間・拘束時間では使用者側の「自宅で長く休めるように」との要望から長距離で特例措置を講じるなど双方意見を汲み取った格好だ。
前回持ち越しとなった特例の分割休息で1回当たり「継続4時間以上」が「継続3時間以上」となったことを労働者側は「緩和」と懸念し、使用者側は「多様な働き方に対応したもの」と認識する。双方立場で見方も異なるが、通達による詳細は今後も検討を継続、全体では大きく改善した内容で使用者側も「運送業界一丸で取り組む」姿勢である。
大きな焦点となったのが荷主都合。使用者側は自分達の裁量がきかないところへの配慮を求め、この議論が「商慣習を変える」流れともなった。
厚生労働省が待機時間や荷役作業で長時間労働が生じる実態を受け、荷主に対する要請措置を決め、告示と同時に速やかに講じる対応をとったことや、新たに専門の相談窓口を設けるなど施策に反映されたことは大きい。
全日本トラック協会が先日、自民・公明議連と厚労大臣に、監督署の運送事業者への指導にはこれら対策が浸透し「商慣習が変わるまで」実態に即した配慮を求めた。対策の実効性確保が肝要だ。
8日の作業部会では公益代表の首藤若菜委員が過労に繋がるこれまでの悪しき商慣習について「業界の常識を変えることが商慣習を変える第一歩」と指摘、藤村博之部会長は「荷主が享受できるサービスは運転者あってこそ。どこかで折り合いをつける必要がある」とコメントしている。
過労防止へ商慣習を変える働きかけを継続していく必要がある。