フォローアップ体制を徹底

「総合物流施策大綱」(2021-25 年度)が閣議決定された。代表的な指標(KPI)を設け、実効性を高めるため関係者も交えて定期的に政策評価するなどフォローアップ体制に力点を置く。
KPIには「物流DXを実現する事業者割合70%」など高い目標を掲げ、労働力不足対策では「トラックドライバーの平均年間所得額・労働時間を全産業平均に」を明記した。全産業と比べ「労働時間が2割多く賃金は1-2割低い」という現実に対し、政府における物流施策の指針を示した大綱において一気に改善させる。
これには24年度からの時間外労働上限規制適用を踏まえ、18年末に議員立法で成立した改正事業法をはじめ労働環境改善、取引適正化への諸施策が確実に実行されること、そして大綱の大きな柱に掲げた物流標準化、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現が前提といえるだろう。
こうした観点からもこれまでの大綱とは異なるKPIの位置づけやフォローアップ体制に着目したい。
これまでは大綱を踏まえた「総合物流施策推進プログラム」を国が別に策定し、この中で各省庁が講ずる具体的な施策と関連したKPIを設定し、国が毎年改定してきた。
しかし直面する課題は国のみならず、物流事業者や荷主など関係者と連携し解決すべきであること、また、物流課題がより先鋭化、鮮明化していることから、取り組むべき課題を重点化、集中して取り組むことから、本大綱では閣議決定段階でKPIを盛り込んだ。
これらの進捗を、有識者や関係事業者も含めた政策評価の場を設け、客観的視点でフォローアップする。大綱策定を議論してきた検討会のメンバーなどが想定され、進捗状況の検証を徹底していく考えだ。
荷主所管省庁との連携強化もポイントだ。策定にあたった国交省の久保田雅晴大臣官房公共交通・物流政策審議官は、経産省はこれ以上の物流コスト上昇を避けたいこと、農水省は30年5兆円を掲げる輸出拡大目標に物流は必要不可欠という実情から今まで以上に綿密な連携体制を強調する。荷主側の立場もこれまでと風向きが異なる。
KPIには広報面でも「物流の現状や課題に問題意識を持つ消費者の割合100%」、「〝担い手にやさしい物流〟を実践する消費者の割合80%」を盛り込む。消費者も含むすべてのステークホルダーの理解、協力が物流改革を強く後押しする。