認識の相違が浮き彫りに

国土交通省が行った「トラック輸送状況の実態調査」結果から取引環境の実態やドライバーの労働状況が明らかになった。「荷待ちの発生」や「荷役料金の負担」など荷主と元請、実運送間での認識の相違が浮き彫りになった、改善基準告示や取引適正化を進める指針、制度に対して荷主の認知度が進んでいないことも確認された。
荷待ちが発生しているとの回答が荷主の約20%に対し実運送は約70%、元請は約50%。荷役料金の荷主負担は荷主の約80%に対し、実運送約50%、元請約40%であり、労働時間短縮へ実運送から改善要望したとの回答約30%に対し荷主・元請からはほとんど要望を受けていないなど大きな開きがみられた。
調査結果が報告された18日の「トラック輸送における取引環境・労働改善時間改善中央協議会」で、この荷待ち発生の回答の違いについて委員の質問を受けた伊地知英己貨物課長は「まず荷待ちの原因の認識から」とし、予約受付システムの導入を例にあげ「双方話合い解決できるところはある」との見解を示す。双方で原因をしっかり確認し改善策を見出したい。
深刻なのは荷主の約50%が改善基準告示を「存在も内容も知らない」、30%が「存在は知っているが、内容までは知らない」で8割が内容を認識していない点である。
ほか荷主の認知度をみると、標準貨物自動車運送約款が約50%、トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドラインは約55%、荷主勧告制度は約50%、荷主の配慮義務(働きかけ)に至っては実運送・元請の認知度が約60%で、荷主は約25%にとどまる。
認知度が高まれば労働環境が改善されるとは言い切れないが、コロナ禍で物流を止めてはいけないとの危機感は発着荷主とも共有しその意識は強まっている。そのための法整備や制度、進むべき方向性、成功事例といったツールを浸透させる有効な施策が急がれる。
協議会では改善基準告示に関しても「中身を荷主にもシンプルに分かるように」との委員の要望が聞かれた。告示の見直しを進めているこの段階で荷主の認知度が進んでいない厳しい現実に直面する。運送事業者の自助努力では解決できない点も多く、荷主都合による適用除外も含め対応が求められる。
コロナ禍で運賃交渉が進まない状況だが、今般の実態調査で明らかになった課題については、あらためて発着荷主、元請、実運送間のコミュニケーションの仕方によるところが大きい。