時機を逸せず物流標準化を

これまでの物流のあり方を変革する物流DX(デジタルトランスフォーネーション)には、将来展望の明るさとともにクリアすべき課題も多い。物流を構成するソフト・ハード各要素の標準化が依然として重くのしかかる。
物流DXの整備には標準化が不可欠とされる中、新たに「官民物流標準化懇談会」が組織され17日にも初会合が行われる。次期総合物流施策大綱も近々決定されサプライチェーン全体で標準化を推し進める大きな潮目にあることは確かだ。
次期大綱案に記された代表的な指標(KPI)には、物流事業者の割合として「自動化・機械化・デジタル化に着手」100%、「物流DXを実現」75%などを掲げる。現実的にはかなり高いハードルだ。しかし個社の取り組みにとどまらずサプライチェーン全体でDXを進める意識醸成の観点からも鮮明な方向を示すことは大きい。
これをより現実的なものとするにも国の施策として全体最適を見据えたデジタル環境の整備や規制緩和、特例など利点を広く周知する作業が大事だ。物流現場では自動化、機械化が進展している。施策面でもさらなる〝見える化〟が望まれる。
加工食品分野が先んじて物流標準化への取り組みを進めている。昨年3月にアクションプランを策定し、外装サイズについては指針を取りまとめるなど各プロジェクトが進行中だ。荷待ちや荷役など厳しい労働環境から〝ものが運べない〟危機感がこの物流改善の大きな背景にある。人手不足が進む中で、他分野にも横広げできるプロトタイプの構築が急がれる。
物流標準化のネックは大きくはコスト負担と商慣習にある。従前から認識されるが改善が進まない古くて新しい課題だ。
こうした中で新たに立ち上がる「官民物流標準化懇談会」は特定項目を取り上げ、実行に結び付く方向性についてより具体的に議論・検討する場となる。
行政、学識経験者に民間も物流団体・事業者、経済団体、荷主系団体とまさしくオールジャパンによる連携が期待される。〝ものが運べない〟危機感も強まる中で集中的に標準化を推し進めその機運を高めたい。
日本物流団体連合会の渡邉健二会長が退任(29日付)にあたって「コロナで社会全体が物流の重要性を再認識した今こそ、官民で業界を超えた連携を構築し、標準化を進めるチャンス」とコメントする。時機を逸せず取り組みその成果をしっかりと形にしていきたい。