次代の価値創出に期待

多くの企業が入社式を中止、延期しトップの訓示は映像で配信するなど新型コロナウイルスの感染拡大防止に努めている。新入社員は先行き不安だろうが、これから物流業界で仕事をする人達には、物流が平時、有事も重要な役割を担うインフラであることに留意し、誇りを持って仕事に励んでほしい。
昨年の消費税率引き上げから暖冬、そして新型コロナウイルスの問題と〝3重苦〟が事業者の経営に重くのしかかる。トラック運送業界は働き方改革を進めながらこれら経営課題に対応しなければならない。
各社のトップ訓示からはこうした足元の事業環境に共通認識を持ちながら、若い世代の視点、感性に期待を込め、ともに苦難を乗り越え新たな成長へ希望を伝えるメッセージを出している。
いつの時代も変化への対応が求められる。状況変化を的確に捉えた能動的な姿勢とともに「国や宗教、性別など様々な差異と向き合うことがイノベーションにつながる」(日本通運齋藤社長)と多様性も大きなキーワードだ。
AI、IоTの技術革新が進むなかでも「データテクノロジーだけに依存できず、人の状況判断やコミュニケーションが重要」(近鉄エクスプレス鳥居社長)、「求められるのは人間力、広い意味での好奇心、挑戦する心」(ヤマトHD長尾社長)。まずは人間力に磨きをかけることからだ。
新型コロナウイルスの問題では「こうした時こそ、如何に人々の日常を守るか、我々の力の見せ所」(西濃運輸小寺社長)、「危機の先にある大きな変化を見据え、 自らを磨いてほしい」(鴻池運輸鴻池社長)と変化をチャンスにとらえる。
時差通勤やテレワークなど仕事の仕方の見直しにも迫られるが、同時に「合理的で生産性の高い働き方の導入が加速すれば、個人の能力や成果が明確に問われる」(鴻池社長)。こうした変化に対応できる人材が育つ環境づくりが一層求められる。
トラック運送業界は「標準的な運賃の告示制度」の施行を間近に控える。確実に実効性を発揮して取引適正化、労働環境の改善を実現、「働き方改革を経営の中心に沿え」(トナミ運輸綿貫社長)業界全体を底上げするタイミングにある。
新社会人にはスタートラインで新型コロナの険しいハードルがあるが、「明るく目標を持って」(カンダHD原島社長)これを乗り越え、さらに自身の個性を伸ばし、次代の物流業界の新たな価値を創出する役割を担ってほしい。