実効性ある適切な施策を

政府は事業規模108兆円の緊急経済対策を決め、支援措置や経済再生への各施策を講じる。新型コロナウイルスの影響は長期化する様相で、事業者は足元の課題解決とともに中長期視点に立った対策も必要だ。国の実効性ある適切な施策が求められる。
中小事業者が多くを占めるトラック運送業界はコロナ危機下においてもドライバーを確保し、重要な物流インフラ機能を維持しなければならない。
人手不足が深刻化する中で、この状況が長引けば雇用環境は一層厳しさを増す。
今般の経済対策の柱である「雇用の維持と事業継続」において、財政・金融・税制の各措置が講じられるが、物流機能を維持する観点からも、さらに状況を見ながら必要とされる施策の迅速な展開が望まれる。
感染拡大防止には〝3つの密〟を避ける行動を徹底するとともに、マスクや消毒液などの感染防止に係る備品の確保が急務だ。
緊急対策ではこれら生産設備への投資を支援し、マスクについては月7億枚を超える量を確保するという。トラック運送業界では各トラック協会などを通じて要請しているが、依然として現場からはマスク不足が指摘されている。輸送業務における確実な感染拡大防止の観点からも早期に対応してほしい。
今般の対策は緊急支援策とともに、終息後の需要喚起と社会変革を推進する〝V時回復フェーズ〟としている。観光・運輸、飲食、イベントなど大きく落ち込んだ消費の喚起と、デジタル化・リモート化など投資喚起の両面から反転攻勢を図る考えだ。
将来の感染症リスクに対しても強靱な経済、社会構造を築き、持続的成長を実現するためには、この危機をチャンスととらえる視点は大事だ。
テレワークや在宅勤務といった働き方の見直しが進み、遠隔教育、遠隔診療などICTを活用したリモート化やデジタル化の取り組みも加速するだろう。緊急対策にはトラックのIC点呼などを活用した非接触型事業運用も盛り込まれ、物流業界の生産性向上へのさらなる施策が期待される。
しかし足元をみると早期のV字回復の展望よりも、一定の経済停滞が続くことによる避けられない物量の減少が現実にある。これを踏まえ事業者は中長期的な対策、戦略の策定に迫られる。
緊急事態宣言で、トラック運送業界は災害時と同様の緊急物資輸送を担う。事業者が少しでも先行き不安感を拭えるような手厚い支援策が求められる。