重要インフラを広く周知

新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、トラック運送業の現場からは悲痛の叫びが聞かれる。感染への不安が増大する中で、平時と同様に業務に従事するドライバーの心身サポートも必要だ。
宅配事業者が配達先で荷受人から誹謗中傷を受けた、ドライバーがマスクを着用せず配送先センターで出入り禁止や荷受けを拒否された、さらには長距離ドライバーの子どもが学校から自宅待機とされ、入学式・始業式に出席できない――心が痛む状況が各地で報告されている。
児童の登校拒否の件は一般メディアでも広く取り上げられ、赤羽国交相は「物流の維持へ危険を承知しながら尽力するトラックドライバーの世帯の皆さまに極めて不適切」とし、関係機関に周知・徹底を申し入れるなど対応を図っている。
コロナウイルスに敏感になり、退職を考える人も出てきているという。こうした状況が長引けばトラック運送業の人手不足はますます加速化し物流を止めることになりかねない。
運輸労連は13日に立憲民主党、運輸労連政策推進議員懇談会に衛生用品の供給や感染時の補償、雇用調整助成金の拡充とともに、トラック運輸産業に対する国民の理解と協力を求める緊急要請を行った。ライフラインを止めず、物流崩壊による経済、国民生活の破綻を引き起こないためにも、まずはトラックドライバーの健康と雇用を守ることが第一である。
運輸労連が組合員に対して行った新型コロナウイルスの影響に関する調査結果には「マスクや消毒液不足から感染拡大地域への輸送に不安」「休業時の国の補償制度が不明確で心身共に疲弊」など報告がある。さらには「ここにきてもドライバーには命を守るような指示が国から出ない」と切迫した状況が伺える。
政府は緊急経済対策で感染防止や雇用の維持、事業継続など各種助成金を創出する。これら措置の拡充とともに、国内物流の9割を担うトラック輸送に対する、国民への周知と理解へ効果的な施策がほしい。
災害時には被災地への支援物資輸送で評価を受ける。コロナ危機も同様に緊急物資輸送の役割を担う。厳しい局面下、あらためて地域の生活、経済を支える重要インフラであることを伝えることが必要だ。
トラック運送業に対する企業・国民の理解と協力を得る「ホワイト物流推進運動」は賛同企業募集から1年で924社が手を挙げた。荷主企業はもちろん、国民全体にもこの賛同の輪を広げなければならない。