まずは事業者の支援策を

新型コロナウイルスの感染拡大が国内外サプライチェーンに大きな打撃を与えている。多くの事業者が業績に影響すると見ており新年度計画の見直しも迫られる。終息が見通せず、経済活動の減速によるさらなる景況悪化が懸念される。
物流事業者には扱い品目により2面性の影響がある。人手不足の中で日用消耗品などの発注が急増し、一時的な人海戦術も出荷作業の遅滞が続いている。
一方で生産活動の停止、サプライチェーンの寸断による収入減の状況が続けば、中小事業者が大半であるトラック運送業は事業継続も危惧される。住設関連や自動車部品など中国生産拠点との係りが大きい品目からその動きがみられるが、パンデミックで日増しに感染拡大が進めば広範に影響を及ぼす。まず事業者への支援策が急がれる。
全日本トラック協会が新型コロナウイルスの影響を「激甚災害に準ずるもの」と認定し、影響を受ける事業者への融資を始めた。重要インフラである輸送の継続のためにも各助成事業の拡充、速やかな実行が求められる。
また、中小事業者からは新型コロナの影響で「不当に契約を打ち切られた」「適正なコスト負担を伴わず通常より低い価格での受注を迫られた」など懸念の声も聞かれる。物流事業者も適正な取引環境の整備により、しわ寄せが及ばない措置が望まれる。
景況感の指標を見ても東日本大震災、リーマンショック時の指標に近づきつつある。
多発する自然災害時の対応を踏まえ、BCP(事業継続計画)を策定、刷新する動きが見られるが、
今般のような感染拡大におけるBCPやマニュアルの対応も課題だ。
日本ロジスティックスシステム協会(JILS)が会員荷主、物流企業に行ったアンケート調査では、物流会社でBCPの感染症対策を策定しているのは16%。今回策定を含めても40%で、荷主企業も半数に満たない。
荷主と物流事業者の連携が不可欠だが、同調査において製造業からは物流、サプライチェーンに対して「時間指定の緩和、待機時間の削減、翌々日配送の協力」「過敏になり在庫の積み上げを行わず戦略的な在庫保有に留める」など聞かれた。物流子会社からは「取引先各社の情報を共有できるネットワーク環境の整備」「消費激減による有休インフラ(倉庫、トラック、人材など)のシェアリング」など要望があった。
新型コロナの逆風が続くが、行政の支援とあわせ、今一度物流効率化、生産性向上への意識を高め、物流強靭化を図りたい。