国民全体の理解得る時

トラック運送事業の働き方改革に関して、政府をあげて取り組む機運が高まっている。6月29日、自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議を設置し、首相官邸で初会合を開いた。

トラックを中心にバス、タクシーの自動車運転業務にも罰則付きの時間外労働上限規制が導入されることを機に、長時間労働是正に向けた関連制度の見直しや支援措置を検討するのだという。

当面は今年8月を目途に2017、18年度に取り組む施策をまとめる。従事者の約4割が残業上限規制である月80時間を超えている自動車運転業務は、人手不足が深刻化している。その将来の担い手確保に向け、政府全体が動き出したものだ。

今年3月にまとまった政府の「働き方改革実行計画」で、時間外労働の罰則付き上限規制が導入されることになり、自動車運転業務についても、改正法施行の5年後に、年960時間(=月平均80時間以内)の上限規制が適用されることになった。

将来的には、一般則(年720時間)の適用をめざすこととされたが、自動車運送事業については関係省庁横断的な検討の場を設け、長時間労働是正に向けた環境整備のための行動計画を策定、実施することになっていた。

トラックを中心とした自動車運転業務は、平均労働時間が全職業平均と比べ約1~2割長く、所定外労働時間は約2~3倍長い。時間外労働が月80時間を超える者の割合は約4割に達し、全職業平均の約3倍だ。一方、年間賃金は、労働時間が長いにもかかわらず約1~3割低い。

全職種平均の求人倍率が1・22であるのに対し、自動車運転者の求人倍率は2・33と高い。長時間労働、低賃金のまま人材を確保しようとしても無理なことは、業界内外でも共通認識である。時短しても賃金が低下しない構造は、生産性を向上して収益を上げ、労働分配で還元するしかないだろう。

今回設置された関係省庁連絡会議は、政府全体で取り組む枠組みだ。

全ト協の総会で藤井直樹自動車局長は、運送事業の生産性を向上させる方策について「どのような後押し、支援ができるかを政府全体で考えていくことになる」とあいさつした。

このように政府全体の動きとなってきたのは、荷主や利用者を含む国民全体が物流の労働力不足、とくにトラックドライバー不足に危機感を抱き始めたからに他ならない。

今こそ国民の理解を得て、適正なコストを賄える運賃・料金の収受に努めたい。