それでも減らない過労死

トラック運送業の過労死等認定件数が、依然として業種別ワースト1であることが厚生労働省の2016年度「過労死等の労災補償状況」で明らかになった。

16年度の脳・心臓疾患による労災認定件数を業種別でみると、トラック運送業は前年度の82件から89件へと7件増え、2位の飲食店14件(前年3位/15件)、3位総合工事業の8件(同2位/16件)に大きな差をつけてダントツで、業種別の統計を開始した09年度以降8年連続でワースト1だ。

また、16年度の精神障害による労災認定件数はトラック運送業が26件と前年度(36件)より10件減少し、3年ぶりにワースト1を返上した。ワースト1は社会保険・社会福祉・介護事業の46件(前年2位の24件)、2位は医療業の32件(同3位/23件)だ。

精神障害と脳・心臓疾患による認定件数合計は、トラック運送業がワースト1である。背景には、労働団体関係者が指摘する「労働時間の長さによって賃金が決定される『長時間労働・低賃金』の産業構造」に起因することがうかがえる。

国土交通、厚生労働両省は一昨年5月、トラック取引環境・労働時間改善協議会を立ち上げ、長い間放置されてきたトラック運送業の長時間労働改善に着手した。中央のほか、各都道府県に地方協議会も設け、全国的に取り組みをスタートさせた。

長時間労働の抑制では16年度に、荷主と運送事業者が連携してドライバーの長時間労働を改善するパイロット事業を展開。荷主の協力の下、47都道府県で48事業が実施され、拘束時間の削減、荷待ち時間の削減などに成果が見られた。

にもかかわらず、トラック運送事業の脳・心臓疾患による労災認定件数は、15年、16年と2年連続で増加している。

こうしたなか、9月に向けてトラック労組の運輸労連が長時間労働の改善に向け「時間外上限規制の一般則適用」を求める100万人署名活動をスタートさせる。

昨年9月、政府が「働き方改革実現会議」を立ち上げたとき、トラックドライバーは長時間労働からの開放を期待した。だが、今年3月に取りまとめられた実行計画は、一般則の施行から5年後に「年960時間(月平均80時間)以内」の規制を適用することで決着した。

運輸労連は、残業の上限規制について「5年の猶予は理解するにしても、猶予後の上限時間が他産業と大きく異なる点だけは合点がいかない」と、署名活動を、現状を変革する運動として位置づけている。