「適正な転嫁」が急務

事業環境は先行き不透明感が増す。経済活動の正常化の動きが進みつつも、感染拡大や物価上昇による消費への影響、燃料価格の高止まりなど下振れ要素が重なる。
全日本トラック協会の「4-6月期トラック運送業界の景況感」では、燃料価格高騰分を適正に転嫁できていない事業者が多く、運送原価が増大、判断指数は1-3月期より8・1ポイント悪化のマイナス52・1となった。
この指数は前期発表の見通し数値と同じであり、国の施策が講じられる中でも価格転嫁は一気に進まないことが考えられる。長引くほど企業利益を圧迫する。こうしたことを踏まえ、7-9月期指数は横ばいの見通しだ。
上場物流企業の4-6月期決算が出揃い、多くが増収増益を確保した。3分の2が営業増益を達成するなど概ね順調だが、やはり下振れ要素からか通期予想を上方修正したところは限定的だ。
4-6月期決算をみると、利益面は増収効果によるところが大きく、通年でも同ペースを見通せるかは不透明だ。効率化、生産性向上、構造改革の取り組みも限界がある。
小・零細事業者はさらに厳しい局面に置かれる。燃料高騰は事業規模が大きいところは経費項目の1部であり小規模ほど直接的に利益を圧迫する。
倒産件数がここにきて増えている。東京商工リサーチよると7月の道路貨物運送業倒産は前年同月比5割増の21件。コロナ関連倒産が増え、これまでコロナ関連の金融支援で倒産増加は抑制されてきたものの、「小・零細企業の息切れが目立ち始めた」とする。そこに燃料高止まりの長期化は確実に企業の体力を奪う。
帝国データバンクによると、原油や燃料、原材料など「仕入れ価格上昇」、取引先からの値下げ圧力で価格転嫁できない「値上げ難」などで収益が維持できず倒産した「物価高倒産」が急増している。1-7月で116件と、過去5年で最多だった昨年の年間138件を大幅に上回るペース。業種別では燃料高の影響が大きい「運輸業」(33 件)がトップで全体の約3割を占めた。
事業経営において先行きの判断には難しい状況が続く。しかしながら先の決算からも、物量そのものは業種で開きがあるものの確実に回復・拡大基調にあるといえる。
コスト圧力が重くのしかかる中で、するべきことは適正運賃収受の取り組み。適正に転嫁ができなければ物流維持も困難な局面に陥る。あらためて広く社会に訴えていく必要がある。