過疎地対策へ知見を共有

自動配送ロボットやドローン配送の実装化に向けた動きが各地で活発だ。政府が地方からデジタル化を図る「デジタル田園都市国家構想」を進める中で、地方物流の課題解決に向け自治体の期待も高まっている。
人口減少で地域社会の活力が低下し、生産機能、生活環境の整備が他の地域より低位とされる、いわゆる過疎地域は全国の自治体数で半数近くを占める。過疎地対策は従前からの課題だが、デジタルトランスフォーメーション(DX)化がこれを後押しし、官民・業界内外の垣根を超え解決策を見出そうとの動きも見られる。
自動配送ロボットは都市部、地方部、住宅地と様ざまなケースで公道実証が行われているが、経済産業省が自治体に行った調査では、とくに買い物弱者対策への活用で関心が高い。地域の見守りや情報収集など配送ロボットに機能付加するアイデアも聞かかれる。実証事例の横展開で新たな利活用の可能性も広がる。
こうした中で、ドローン物流の実証など地域物流の課題解決に取り組む5自治体が「新スマート物流推進に向けた自治体広域連携協定」を締結した。他の自治体や民間企業の参画を促し、今春にも協議会を発足する。物流効率化、自動化、貨客混載など複層的な活用で地域社会の課題に対応する新スマート物流の取り組みを共有するもの。北海道上士幌町の竹中貢町長は「物流課題解決への糸口はあり、多くの自治体がそれを共有することでより良い解決策を見出せる」と呼び掛ける。
セイノーホールディングス、エアロネクストが新スマート物流を実現するドローンを活用した実証実験を各地で行っており、今回協定を締結した自治体のうち3自治体は同実証を実施、横連携を図っている。
昨年4月から実証を始めた山梨県小菅村はこれまでドローン配送230回、車による買い物代行は454回を数える。人口679人で村内の商店は2店舗のみ。隣の大月市まで車で片道40分かかり対策が急務である。実証で使う保管所まで大月駅からバスの貨客混載を利用、事業者の共同配送も今後協議するという。
過疎地への輸送は物流業界にとっても荷物の少ない赤字路線であり、人手不足に脱炭素化という大きな潮流においてその対応は避けて通れない。
共同配送、貨客混載と様ざまな策を講じていく中で、民間も自治体とともに知見・経験を共有していきたい。地域課題の解決と物流の新たな価値創出をともに実現させる機運にある。