足元の厳しさを好機に

直近の各景況調査によると、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響もあり足踏み状態が続く。トラック運送業は品目により荷動きの状況は異なるが、一部部品・材料の調達不安、上昇を続ける燃料価格動向など先行き懸念材料は増す。
全国中小企業団体中央会(全国中央会)が発表した5月の月次調査によると、運輸業の主要指標は大きく改善した4月に対し、景況DIはほぼ横ばいだが、売上高DIは12・3ポイント改善し5・3となった。運輸業の主要指標がプラスに浮上したのは2018年4月(売上高DI3・1)以来である。
同調査は各都道府県中央会において中小企業の組合役職員への委嘱で情報を収集する。指標は好転したとする割合から、悪化したとする割合を差し引いた値である。
コロナ感染拡大により指標は落ち込み、運輸業では昨年5月の景況DIマイナス84・4、売上高DIマイナス85・2まで悪化。以降緩やかながら回復基調を示している。
売上指標が好転した背景には、物流関係で食料品を主体とした消費関連の活況に加え、生産回復による一部輸送量の増加が想定される。ただ前年同期と比較した景況感調査であり、大きく落ち込んだ前年よりは改善したと答える割合が高くなるのは想像できる。
一方で、運輸業の利益面の指標をみると、収益状況DIマイナス27・3、資金繰りDIマイナス20・4など、前年の状況と比べても悪いと答える事業者の方が多い。
取引条件DIはマイナス9・8。貨物関係事業者からは緊急事態宣言やまん延防止措置の影響で連休明けは荷物情報が減少を続けるなど「運賃相場も下落傾向」と厳しいコメントが聞かれる。中小企業がほとんどのトラック運送業は荷主の業績に大きく左右される。雇用調整助成金や資金繰り等各支援策の活用も、コロナの長期化で先行き事業継続へ不安感は増す。
希望はワクチン接種の広がりによる経済の底上げだが、コロナ禍の対応も一巡し、ニューノーマルや事業再構築へ手応えを感じるところもある。全国中央会の調査からも「DXによる業務効率化」(ソフトウエア)や「オンラインでの営業スタイル変化」(不動産)など様ざまな報告があがっている。
物流業界も新たな総合物流施策大綱のもと、DXへの動きを加速化する。しっかりとDX基盤が構築されれば、新サービスや事業再構築への可能性も膨らむ。足元の厳しさは続くがこの環境変化を好機にとらえたい。