脱炭素社会へ大きな期待
物流、自動車メーカーなど6社が燃料電池(FC)大型トラックの走行実証を2022年春にも行うと発表した。大型トラックは国内商用車全体のCО2排出量の約7割を占めており、早期実用化へ動きが注目される。
トラック運送事業者はドライバーのエコドライブの励行とともに、燃料性能の高い車両の導入や、CО2排出量が原油由来燃料より低い天然ガス自動車(NGV)などの導入を通じて省エネ、CО2削減の取り組みを続けている。
ハイブリッド(HV)に電気自動車(EV)も2017年から小型トラックで導入され、とりわけ電動化への関心は高まる。しかしHV、EVもトラックの導入実績は少なく、省エネ、CО2削減効果のほかコスト面のメリットなどまだ見えてこないのも実態だ。
大型トラックについては十分な航続距離と積載量、短時間の燃料供給が求められ、電動化にはエネルギー密度の高い水素燃料のFCが有望視される。今般、走行実証に参加するトヨタと日野は今年3月に共同開発を発表。北米でも21年前半に試作車両を開発する。
グローバルには5月にダイムラートラックAGとボルボ・グループの商用車業界大手2社が合弁会社の設立を発表している。20年代後半にも量産モデルを計画しており、FCトラック開発の動きが具現化してきた。
量産化には必要な燃料インフラの構築をはじめ課題も多く、企業間の協業による強力な連携が必要だ。今回の6社の取り組みは自動車メーカーに、物流、荷主も加わる。それぞれの物流業務で使用しながらの走行実証で、実用化へ大きな一歩を踏み出した。
トヨタ、日野は航続距離約600㌔㍍を目標に掲げる。環境性能と実用性の高次元での両立が期待される。
環境省によると新型コロナによる移動制限や生産活動の停止などで今年の世界全体のCО2排出量は前年比8%減と見込まれ、これはリーマンショック時の減少幅の6倍という。リーマン時はその後の景気回復で排出量は元の水準に戻ったが、コロナへの対応を機とした脱炭素社会への移行をしっかりととらえる必要がある。
テレワークやオンライン会議などによる交通需要減少の一方で、デジタル機器やデータセンターの電力消費、住宅のエネルギー消費、さらに宅配の需要拡大などCО2排出の増加要素もある。
こうした変化も見据え、持続可能な社会に貢献する輸送の実現へFCトラックへの期待は大きい。