運べない危機 社会全体で共有

10月の食品ロス削減、11月の下請取引適正化推進など省庁が普及・啓発を集中的に行う活動ではトラック運送業の労働環境や生産性に大きく関わるものがあり注視したい。
昨年10月に食品ロス削減推進法が施行、農林水産省は小売・外食事業者に10月の食品ロス削減月間にあわせ、消費者への啓発活動を働き掛けてきた。先ごろ協力事業者とその取り組みを公表。売り場の啓発ポスターには事業者の適正発注や納品期限緩和など仕入れの対応事例も記され、供給側の情報を提供しながら意識高揚を促す。消費者とのコミュニケーションが有効であり継続的な施策が望まれる。
国内の食品ロス発生量は2017年度で612万㌧、前年より31万㌧減少しだが、1日で10㌧トラック約1677台分と膨大な量だ。これを是正することは人手不足が深刻化する物流現場の労働環境改善にもつながる。
農水省では10月30日の「全国一斉商慣習見直しの日」に商慣習見直しに取り組む食品製造・小売事業者も公表する。メーカーの賞味期限の大括り化や大手スーパー、コンビニの納品期限緩和の動きは広がる。納品期限緩和の推奨品目も増やすなどサプライチェーン全体での食品ロス削減への動きに期待は高まる。
11月の下請取引適正化推進月間では、中小企業庁、公正取引委員会が連携し、講習会などを通じ親事業者の下請取引担当者などへ関連法の趣旨・内容を周知徹底する。中企庁では相談窓口の下請け駆け込み寺の利用促進を図る。新型コロナの影響によるしわ寄せも懸念され、長時間労働につながる短納期発注や発注内容の頻繁な変更を行わないよう周知と配慮が求められる。
日本ロジスティクスシステム協会の「ロジスティクスコンセプト2030」には営業用貨物自動車の需給バランスが示され、2020年で需要量15%相当の4・6億㌧、30年で36%相当の11・4億㌧が運べなくなると予測している。現状の輸送環境を放置すると、10年後には3割超の商品が運べないと警鐘を鳴らす。
需要は堅調に推移する一方で供給側はドライバー不足で追いつけない。人手不足解消にはトラック現場の魅力度を高めることで、そのための適正運賃・料金収受と取引適正化へ荷主の一層の理解、協力が不可欠だ。
同時にこの3割超のギャップ解消には、トラック運送業の自助努力は勿論、荷主の協力、商慣習の見直しや消費者の行動と社会全体で変えていくという視座も必要だ。