格差拡大に歯止めを

昨年度の道路貨物運送業の倒産件数が前年度比1・4倍の263件となり、7年ぶりに200件を超えた。東京商工リサーチ(TSR)が発表、燃料費の高止まりに、人手不足の影響が広がっている。
トラック運送業界は取引適正化に物流DXの推進など効率化、収益力強化への動きを業界一丸で進め、国も様ざまな施策を講じて後押しする。成果は見られるものの、とりわけ小・零細企業は荷主との価格交渉力の弱さや、多重構造で適正運賃収受が進まないことがこの厳しい環境下でさらに体力を落としている。
TSRの発表では負債1億円未満の倒産が全体の6割以上の一方、件数の増加率は負債額が大きいレンジほど高く、大型倒産も増えつつあるという。中堅規模の倒産が増加しており、道路貨物運送業の負債総額は前年度の2倍超だ。規模の大小に関わらず長引くコスト圧力や人手不足の影響が強まっているといえる。
いわゆる「物価高倒産」の増加傾向が続いている。帝国データバンク(TDB)によると、昨年度の「物価高倒産」は全体で前年度比3・4倍の463件と400件超え。業種詳細別では運輸業が前年度4・9倍の83件で最も多い。燃料高騰に対する価格転嫁率の低さが際立っている。
こうした中で高止まりが続く燃料価格は10日時点の軽油店頭価格(148・4円)が4週連続の値上がりで今年の最高値をつけている。
政府は24年問題で緊急対策を6月上旬にも取りまとめ、抜本的な対策の手を打つが、まずは足元の燃料高、人手不足対策への迅速な措置が求められる。
トラック運送業界は人手不足関連の倒産も増えており、人材確保に向けた費用負担が大きな壁となっている。人手不足はどの業界でも課題だがトラックは24年問題に直面しその深刻度は増す。
今春闘では前年に対し増額回答が相次ぐが、満額回答が多く聞かれる業界もあり、これ以上の格差拡大には歯止めをかけなければならない。運送事業者単独による解決策では進まない状況にあることは明らかである。
国内の様ざまな景気指標を見ると好材料も増えている。これから取扱個数や物量の増加が見込まれても、受注した仕事をこなす人員を確保できないと営業機会の喪失を招き、荷主側にも大きなダメージだ。
コロナ禍の行動制限緩和で経済活動が上向く中で、物流だけが正常化の波に取り残されてはならない。