新たな連携へ環境整備を

直近の企業の景況感調査では持ち直しの動きだが、コロナウイルス感染拡大の第3波により、これから年末にかけた繁忙期において荷動きへの影響が懸念される。
全国中央会の10月調査では、運輸業の景況指数は9月より改善し5月を底に上向きが続く。全ト協調査の指標を見ても4-6月を底に緩やかに回復する傾向だ。経済活動の再開から物量は徐々に戻しているが、上昇基調もコロナ第3波で先行き不透明感が増している。
国交省が毎月行うコロナの影響調査では、トラック運送業の運送収入20%以上減少の割合が10月の12%に対し、11月13%、12月11%見通しと足踏み状態が伺える。
物流上場企業の中間決算では、物量の減少を想定してコストコントロールや一段の生産性向上に取り組んだ結果、当初予想を上回る利益を計上した企業も多く見られた。
厳しい経営環境で一段の体質強化に踏み込んだところもあるが、中小が多くを占めるトラック運送業では自社のコストコントロール、効率化には限界もある。物量減少が続けば運賃の低迷、値崩れが収益を圧迫する。
新しい生活様式の定着から巣ごもり需要を取り込むBtоCの拡充の一方、コロナの長期化を見据えると、BtоBの品目によってはコロナ前の水準に戻すのは厳しい見方もあり、事業領域が限られる企業には難しい判断に迫られるところだ。
事業者が安定収益を確保し物流を維持するためにも、「標準的な運賃」の実践をはじめ取引適正化を強く進めなければならない。
コロナの影響でも指摘される取引条件のしわ寄せ防止では、下請取引の適正化を宣言した「パートナーシップ構築宣言」の企業数が700社に迫り着実に増えている。「ホワイト物流推進運動」とも通じるもので、さらに浸透させたい。
同宣言はサプライチェーン全体の共存共栄と、規模や系列を越えた新たな連携を促すもの。新たな連携とは企業間連携に、生産性を向上させるIT実装支援や専門人材マッチングなどを示し、これらの宣言企業には補助金の加点措置も講じられる。
物流もDX(デジタルトランスフォーメーション)がキーワードとされる中で、IT、人材マッチングの支援策は中小企業の事業継続へ大きな原動力になる。
これを後押しする業種・業態の垣根を超えた異業種連携やオープンイノベーションの推進など、中小企業が成長戦略を描ける行政のさらなる環境整備が求められる。