労働生産性向上へ創意工夫を

政府の成長戦略会議がまとめた実行計画で「足腰の強い中小企業の構築」に向けた施策の方向性が示された。中小企業が大半を占めるトラック運送業はコロナ禍でもエッセンシャル事業として業務を継続しており、物流を止めないためにも、必要な措置を速やかに実行に移してほしい。
ここにきてコロナの第3波により影響の長期化が懸念される。実行計画は危機的状況に追い込まれてからではなく、可能な限り手前の段階で事業再構築に挑めるよう、ポストコロナにおける中小企業の生産性向上の実現へ予算、税制上の措置を総合的に進めるものだ。
この中で注目されるのは中小企業の規模拡大を通じた生産性向上への施策である。
合併やM&Aの税制上の措置や規模拡大、新分野展開、業態転換を通じた事業再構築への新たな補助制度を検討する。ものづくり補助金や持続化補助金、IT導入補助金も継続措置し、中小企業・小規模事業者がコロナ禍でも積極的に投資を行うことで生産性向上を図る狙いだ。
規模拡大へ合併、M&Aを促すが、実行計画には中小企業政策が「小規模事業者の淘汰を目的とするものでないことは当然であり、ポストコロナで中小企業の経営基盤を強化するもの」とあくまでも企業の競争力強化を見据える。
中小企業の廃業は対前年比2割以上増加し、過去最高水準で推移する。コロナの長期化で更に廃業が進むと雇用や地域社会に大きな影響を及ぼす。とくにトラック運送業に代表される社会的インフラで地域の経済や雇用を支える小規模事業者の持続的発展は必然であり、合併やM&Aもその有効な手段の1つとの見方だ。
実行計画では大企業に対しても「生産性が低い事業価値の評価を行った上で新陳代謝し、スピンオフ、売却、撤退を進め事業再編成を行うこと」を求めている。
カーボンニュートラルやDX(デジタルトランスフォーメーション)投資とともに、これら事業再構築・再編投資にも取り組むよう、繰越欠損金の控除上限引き上げなど税制措置を検討する。取引適正化も含め、大手、中小企業ともに日本全体で労働生産性を高める施策が重要だ。
ウィズコロナ、ポストコロナへの対応は、労働生産性の向上にも好機である。しかしながら足元が不透明なだけに中小企業が成長戦略を描く余力がないのも確かである。生産性向上に前向きに、創意工夫を凝らせるような施策の拡充・支援と継続性が望まれる。