実態反映した改善基準を
自動車運転者の改善基準告示の見直しに向けた検討が今秋にも始まる。トラック運送業の現場の実態を反映させた議論に期待したい。
働き方改革関連法による時間外労働の上限規制年960時間以内について、自動車運転者の業務は2024年4月から適用される。衆参の附帯決議に改善基準告示の総拘束時間の見直しが盛り込まれており、これから議論の上、確実に猶予期間内で周知徹底ができるような環境整備が重要だ。
交通労連で16年間にわたり委員長・トラック部会長を務めた山口浩一氏は定期大会のあいさつの中で、960時間には休日労働が含まれず、年間の最大拘束時間は現行の改善基準告示と変わらない水準で長時間労働は是正されないと指摘。一般則と同じ年720時間以内などの基準になるよう、改善基準告示の見直し議論で求めていくことを呼びかけた。
トラック運送業は人手不足の中で運転者への負担が増し、健康を害することで安全運行への影響も懸念される。
運転者の健康状態に起因する事故をみるとトラックは増加傾向にある。脳疾患、心疾患のガイドライン策定やスクリーニング検査の奨励など国は施策を進めているが、自動車運転者の労働の実態を考慮し、拘束時間、休息期間などの基準を定める改善基準告示にこうした実情を的確に反映させたい。
事業者も働き方改革にしっかり取り組まなければ勝ち残れないとの強い危機感がある。全国運輸事業研究協議会(全運研)が13日に横浜市で開催した全国集会では、全員参加によるスマートフォンでの意識調査が行われ、リアルタイムな意見が聞かれた。
働き方改革への対応では「猶予期間内にはクリアできない内容もある」との回答が4割を占めた。とくに難しい項目はやはり時間外労働時間上限規制の自動車運転業務。次いで上限規制の一般即、有給休暇の取得促進、月60時間超の労働時間外割増だった。
一方でクリアできているが2割、猶予期間内にはクリアできるも3割の回答と、半数が現状は対応が進んでいるとの認識だ。労務管理体制など業界内で取り組み事例を共有することも望まれる。
全運研の意識調査ではテーマに掲げた「物流業界で勝ち残るための戦略」について、重視する項目は人材育成が最も多く、今後の経営の重点項目も「待遇改善や教育など人材投資」が「利益重視」とともに多い。人材が生命線であることが浮き彫りとなった。労働環境の改善なしには企業の勝ち残り策も進まない。