実効性にスピード感を
国土交通省、経済産業省、農林水産省が連携し有識者、関係団体等の委員により9月に立ち上げた「持続可能な物流の実現に向けた検討会」が中間取りまとめ骨子案を示した。物流改善に関するこれまでのガイドラインには限界があり、インセンティブの付与や、とくに着荷主を念頭に実効性ある措置を検討する。
検討会では労働時間規制の影響や物流危機に対する消費者・荷主の理解、物流プロセスの課題など事業者・団体のヒアリングも交え議論してきた。
規制の影響では改善基準告示改正を踏まえ、NX総合研究所が「年拘束時間上限3300時間の場合、2019年度データから不足する輸送能力の割合14・2%」と試算し、発荷主・地域別の状況や、これらの解消が見込める荷待ち時間、荷役時間の削減率も示した。
消費者への理解ではアンケート結果から「2024年問題」を説明した後では7割弱が物流危機へ問題意識を持つと回答しているが、さらなる物流広報の強化が必要との方向を示している。
物流プロセスの課題については、具体的には非効率な商慣習・構造是正、取引の適正化、着荷主の協力の重要性。これまでも幾度となく議論を重ねてきたものだ。
骨子案にはサプライチェーンにおいて強い川下事業者の物流全体の生産性向上の取り組みが重要であり「自覚がない着荷主等を動かす対策」が必要とした。物流事業者と着荷主に契約関係はないが、荷待ちや契約にない附帯作業など課題の原因は多い。着荷主に対して物流改善の取り組みを直接義務付ける法律がないことから「類似の法令を参考にしながら実効性のある施策を検討する」と踏み込んだ対応をとる。
加えて「トラック業界の多重下請構造で実運送者が適正な運賃を収受しづらい状況」にも留意し、この発・着荷主と元請・下請事業者4者の関係を各取引関係、モノの流れにおける課題を記述した図を用いて課題点をより分かりやすく示した。
元請・下請の取引関係では国交省が16日にトラック運送業に係る適正取引推進会議の場を設け、主に元請運送事業者の経営者を対象にあらためて理解と協力を呼びかけるなどこちらも強い姿勢で臨んでいる。
コスト圧力が続く中でとりわけ中小・小規模事業者は足元の収益改善に必死だ。取引適正化は待ったなしだが、省庁連携の動きも強まり物流改善は着実に前進している。実効性とともにスピード感が求められる。