厳しい環境も理解深まる

帝国データバンク(TDB)の11月景気動向調査によると、景気DIは運輸・倉庫業界全体で3カ月連続、うち一般貨物自動車運送では5カ月連続で前月より改善している。事業者からの燃料費やコスト高止まりの懸念は払拭されないが、景況感は緩やかながらも上向きを辿っている。
運輸・倉庫業界の11月景気DIは41・6となり、これは2019年12月(42・6)以来の水準でコロナ禍では最も高い。景気DIは50を境とした良し悪しの判断で、50超えは2018年12月(50・5)まで遡る。この4年間は「悪い」と見る事業者の方が多い。コロナに燃料高騰、物価高とマイナス要因が重なる。
それでも物量の回復傾向に、EC需要増、DX、GXなど新たな付加価値施策のプラス要因も見え始めている。
人流が戻り小売店頭や観光関連が上向き、年末に向けた季節需要の高まりも期待される。品目による開きはあるが総体的には需要増をしっかり捉えて反転攻勢の流れにしたいところだ。
一方で2023年の景気見通しについて、TDB調査では全業種で「回復」を見込む企業は 11・5%にとどまる。「悪化」が25・3%とこれを上回り、「踊り場」が39.・1%と最も多い。その懸念材料は「原油・素材価格(の上昇)」が72.7%と大半を占める。原料高問題は長期化している。
運輸・倉庫業界におけるTDBの仕入単価DIは昨年11月に70を超え、今年3月にピークの75を記録、直近は2カ月連続で下げるが70台が1年続き企業経営を大きく圧迫する。販売単価DIも昨年10月に50を超え、今年10月には過去最高の56・4、11月も56・3の横ばいで「良い」のウェイトが大きいものの、仕入れの70台との開きからは転嫁がなかなか進まないことが分かる。
原料高とともに物流業界は「2024問題」を間近に控える。物量回復に伴う人手不足感もあり人件費増加と燃料費の高止まりが反転攻勢の流れにブレーキをかける。
日本物流団体連合会の池田潤一郎会長は9日の記者会見で2023年の業界展望に触れ、「コロナが収束しても物流はコロナ前のように低コストで担うのは無理。何でも物流にしわ寄せという環境でないことは世間の認識も高まっている」との見解を述べている。
2024問題についてはメディアもこぞって取り上げ、燃料高とともに物流業界が抱える現状への理解が深まりつつあるのは確かだ。