地域に安心感与える物流に
日本GLPと佐川急便が災害時に緊急支援物資をより迅速に届けるよう相互協力する協定を結んだ。物流施設、輸送双方の連携に自治体も含めた体制の強靭化は、地域に貢献する物流業の存在を大きく高めるものだ。
両社の連携はGLPが「施設のシェルターを提供できても物資が届かなければ孤立する」(帖佐義之社長)ことから佐川急便に1年程前から相談してきた。東日本大震災時に仙台港近くの施設で津波を逃れるため140人がランプウエイで避難した経緯がある。各地で災害に強い物流施設を開発、今回の取り組みでは他社施設にも呼び掛け協力体制のネットワークを広げていく考えだ。
機能を補完し合うことで最短のリードタイムで支援物資を提供できる。自治体側も2つの機能の連携で支援業務の負担削減が見込める。GLPでは既に協定を結ぶ千葉県流山市で佐川急便を含めた3者連携の具体的な協議に入っているという。
佐川急便もSGHグループで大規模災害時に物資輸送を中心に支援活動を行ってきた。2017年の九州北部豪雨では物資に拠点管理、コールセンター、輸配送、物資調達と総合力で災害物流支援を行ったのが記憶に新しい。佐川急便は20都道府県、9政令指定都市と協定を結ぶが、災害協定のほか地方創生・地域活性化に関する包括連携と内容は幅広い。
今回の自治体も含めた3者連携では災害時だけでなく防災訓練、安全教室など子どもたちへの啓蒙活動も行う。地域社会に対する防災への貢献は平時から安心感を与える。
大規模物流施設の開発が各地で進む。GLPは相模原市で5棟総延床面積65万平方㍍のプロジェクトが今春着工に入ったが、同市を含め協定を結ぶ各自治体とも3者連携の話を進める考えだ。
このGLPの大規模開発は「アルファリンク」のネーミングでブランド化した。相模原では災害時拠点としての活用に緑地エリアなど1部を開放して近隣住民に身近に感じてもらう。物流の〝見える化〟というオープンハブを開発理念に置く。
物流は社会的に必要不可欠なインフラで、緊急支援物資輸送は使命であるが、帖佐社長は「一般には浸透していないだけに理解を深めてもらう努力も必要」と話す。
物流はコロナ禍でも業務を継続し、頻発化・激甚化する自然災害に対しても物流を止めず、被災地を支援する大きな役割を担う。非常時の体制を強固に、迅速に遂行することが地域との絆を深め、その姿もより鮮明に映るだろう。