地域と共生で新しい運び方

自動走行ロボットによる配送の実証実験が全国各地で行われる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDО)が12企業・10地域の事業を採択した。ソフトバンクと佐川急便は今月にも公道走行を含めた実証に着手する。ラストワンマイル物流の自動化が大きく動き出す。
 自動配送が現実味を増す中で、実証事業を通じて得られる安全性の評価や運用面などの知見を広く共有し、新たな配送サービスの可能性を見出したい。
 新型コロナウイルス感染拡大による巣ごもり需要もありEC需要は急拡大し、宅配の人手不足感は強まる。配送業務における非対面・非接触のニーズも高まる一方だ。
 5月14日の国の未来投資会議で、低速・小型の自動配送ロボットについて「遠隔監視・操作の公道走行実証を年内の可能な限り早期に実行する」との方針が示され、実用化への動きが一気に加速した。
 実用化には自動走行ロボットの技術開発と制度・法令の整備、そして社会受容性というハードルがある。EC需要はコロナが収束しても拡大が続くだろうが、ニーズをとらえて必要とされる社会受容性をどう醸成していくかも課題だ。
 その観点では今般のNEDОの採択事業をみると、集合住宅や市街地、商業施設、工業地帯と各ケースで実証が行われる。BtоCにBtоBの案件もある。実証を重ねていくことで、課題とともに解決のヒントも見えてきそうだ。
 自動走行ロボットの配送実証はこの間も行われてきた。自動運転ベンチャーのZMPは4年前に無人宅配ロボットを開発、様ざまなケースで走行実証と機種改良を続け、秋には公道走行の実証を東京・佃の高層マンション群で実施する。谷口恒社長は「ただ届けるだけでなく、高齢者との会話などコミュニケーション機能も求められるだろう」と見据える。
 佃地区では同様に自動運転一人乗りロボットを、地下駐車場を基地とした定額シェアリングサービスの実証も計画する。また公道の配送実証ではメンテナンスや保管など配送事業者の負担を踏まえ、ガソリンスタンドやコンビニを中継場所にした実証も計画に盛り込む。
 実証に係るメーカーと配送や荷主などサービス事業者も実用化にはそれぞれの視点がある。何より地域との連携が自動配送の社会受容性を高める上で必然だ。
 物流は地域の生活と経済を支える。地域と共生しながら新しい運び方を模索したい。