危機意識で改革を

食品業界の物流改革が進展している。ドライバー不足から物流を維持できない危機感が荷主側にも高まり、リードタイムを延長する動きが相次ぐ。
一部の大手メーカーで繁忙期に行っていた受注日の翌日納品を、翌々日納品とする取り組みが本格化したことは大いに歓迎すべきことである。
国が進める「ホワイト物流」推進運動は8月23日時点で203社が自主行動宣言を表明、この中には食品や飲料メーカーにおいて、推奨項目に「リードタイムの延長」を掲げる多くの大手企業が見受けられる。
加工食品業界では発荷主であるメーカーにはある程度浸透しており、着荷主である卸・問屋の理解が求められる。同推進運動では伊藤忠食品や三井食品なども賛同表明しており、サプライチェーン全体で、トラック運送業の労働環境改善へ理解と協力が進むことが期待される。
7月に全日本トラック協会食料品部会が同運動における「リードタイムの延長」について、加工食品に関わる企業に「自主行動宣言」を検討してもらうよう意見書を策定した。
意見書には「ドライバー不足が深刻化するなか、夜間運転や、夜間の仕分け作業を前提とした運用がドライバーとなることを敬遠させ、ドライバー不足に拍車を掛けている」と記している。まず会員事業者にそれぞれの荷主に対して周知するよう進めている。こうした働きかけを継続していくことも重要である。
国土交通省が8月30日に開いた審議会で内航海運のあり方に関する議論があり、荷主企業から海運モーダルシフトの取り組みについて説明があった。
味の素の説明では、荷待ち時間や附帯作業の多さから加工食品の配送はドライバーから特に敬遠されると指摘。ドライバー不足であること、敬遠される加工食品であること、働き方改革で労働時間が制限されることから「今まで100人で行っていた仕事を50人で行う仕組みが必要」と現場の厳しさを伝えた。
加工食品業界がドライバー不足による物流の影響を一番早く受けるとの危機意識が伺える。同社ではF-LINEによる同業者との取り組みとともに、ドラッグストアが日用品と食料品をともに扱う動きなどから、今後は異業種間の効率化も進むとみている。
リートタイムの延長では出版業界で取次団体が今年3月に1日延長を表明しており、他業界の取り組み事例も広く共有していく流れが望まれる。