働き方改革から安全確保まで

2018年が明けた。

今年も課題山積のトラック運送業界では、長時間労働・低賃金の是正を中心とした、働き方改革が克服すべき最大のテーマだ。

「いっそのこと、一般産業並みにもっと厳しくしてくれればよかったのに」とは、2017年3月に「働き方改革実行計画」が決定された際、業界内で耳にした言葉だ。

トラック事業の産別労働組合である運輸労連では、年間の時間外労働の上限規制について、一般産業並みの年720時間の適用を求める署名活動に初めて取り組み、181万人分の署名を集めた。

トラックを含む自動車運転者の残業時間の上限は、一般産業が年720時間とされたのに対し、適用が5年間猶予されたうえで、年960時間とされた。

別途、改善基準告示があるため、これまで適用除外だった残業の上限時間規制について、5年間の猶予があるとはいえ、罰則付きの規制が適用されることは、大きな一歩には違いないが、年960時間というその水準も含め、中途半端さを感じたのは筆者だけではないであろう。

運輸労連の主張は「一般産業の残業は年間上限720時間となるが、トラックは年960時間、このままではドライバーが集まらない」というもので、「過労死の一番多い産業にこそ、長時間労働の是正が必要」といった訴えが広く賛同を得たのであろう。

今世の中は、トラックドライバーはタダではないことにようやく気付き、手待ち時間の短縮に取り組み始めた。

国土交通省では、運賃と料金を明確に分離し、手待ち時間を「待機時間料」と規定するなど諸料金を収受しやすい環境を整えてトラック事業者を支援している。

労働時間を短縮しても、ドライバーの賃金が下がらないようにすることが肝要だ。

来年度予算では、国交省自動車局が、トラック事業の働き方改革推進のための予算を倍増させて、荷主と連携した生産性向上の取り組みを後押しする構えだ。

さて、景気である。日通総研の見通しによると、2018年の世界経済成長率は3・8%と、堅調な回復基調を維持すると見られている。アジアを中心とする新興国経済も引き続き拡大基調で推移すると見込まれている。

日本経済も景気拡大の基調が続き、18年度の実質経済成長率は1・2%と減速するものの、引き続き内需が景気を下支え。国内の営業用トラック輸送量は17年度2・4%増のあと、18年度も1・3%増と3年連続のプラス見通しとなっている。

景気の拡大基調が続くと、気になるのが交通事故だ。

営業用トラックが第一当事者となった死亡事故は、昨年1月~10月末現在214件となり、21ヵ月ぶりに前年同期を上回り、全日本トラック協会は「絶対に事故は起こさない」という気概を持って安全運行に徹するよう、各都道府県トラック協会に緊急要請を行った。

11月末現在も前年同期比17件増の249件と増勢が続いており、年度末に向け気になるところだ。

石井国交相は、新春インタビューに答え、「国土交通省は、生産性革命が1丁目1番地だと思われがちだが、最大の使命は安全・安心の確保だ」と話している。気を引き締めてかかりたい。