事業基盤安定化へ抜本対策を

全国中小企業団体中央会(全国中央会)が発表した2月の中小企業月次景況調査では、運輸業の主要指標は依然マイナスで悪化判断の方が多いが、前月比では改善を示した。人流の回復で卸売業やサービス業、商店街など非製造業を中心に景況感は上向き、これらが物流にも改善要因となったようだ。
その一方で、エネルギー・原材料価格の高騰と価格転嫁の遅れ、半導体や人手不足によるマイナス影響も長期化している。大幅な原材料価格の高騰や電力料金の上昇が事業者の収益力の足かせとなっている。
運輸業の事業者コメントからは荷動きには比較的明るさが聞かれるが、コスト高に2024年問題に向けた対応、人手不足の懸念材料が拭えない。
全国中央会の同調査の推移を見ると、運輸業ではコロナ禍でマイナス80台まで落ち込んだ各指標も売上高はほぼ均衡に、景況、収益状況もマイナス20台まで回復している。収益状況DIの同水準は19年11月(マイナス27・1)以来でありコロナ禍からの出口も見えつつある。
それでも収益状況はコスト圧迫と価格転嫁の遅れから回復のスピードが遅い。2月の販売価格DIは全体平均の30・9に対し運輸業は4・6。全19業種中16番目の水準だ。コスト上昇分に事業者の価格転嫁が追いつかない。さらにトラック業界では様ざまな対策が講じられているが、荷主との商慣行や構造的問題も根深い。
小規模零細が多いトラック運送事業者はまさしく今日・明日の売り上げである。困窮するエッセンシャル事業者の事業基盤そのものを安定化させる抜本的措置が急務だ。
2024年問題、トラックドライバーの時間外労働時間上限規制適用まであと1年と迫る中、政府は「我が国の物流の革新に関する閣僚会議」を設置し、6月上旬にも緊急対策をパッケージとしてとりまとめる。岸田文雄総理が1年以内に具体的な成果を得られるよう指示した。
検討の方向性の1つである商慣行の見直しでは、3省庁連携の「持続可能な物流の実現に向けた検討会」の議論で挙げられた、荷主や物流事業者に対する規制的措置などが考えられる。
一昨年12月にとりまとめられた政府の転嫁円滑化パッケージでは、公正取引委員会や中小企業庁など一連の措置が講じられ取引適正化を強く後押ししている。さらに省庁連携を加速化ししっかりと成果を生み出したい。