デジタル化への課題整理を

「2020年代の総合物流施策大綱に関する検討会」が11日、17日に行われ、構成員によるプレゼンテーション、意見交換があった。物流効率化に向けた現場の最前線の情報を共有する中で、大きなテーマとなる物流情報のデジタル化・データ化への期待とともに、その前提となる標準化の課題が依然として大きなハードルとなっている。
 11日の会合ではデジタル化を実現する上での課題や、とりわけ労働環境が厳しい加工食品物流に関する構成員の質問が目についた。いずれも今の物流が抱える構造的問題である。
 ローランド・ベルガーの小野塚征志氏は、物流のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が欧米より遅れている点を「属人的・アナログ的な対応が強みになっているから」と分析する。荷主に対しては〝なくなる化〟〝~レス〟による便利さの提供が必要と説く。 
 サプライチェーン全体で物流効率化を進める上で、荷主への理解・協力を促すにも、荷主を動かす具体的な働き掛けが必要だ。
 味の素の堀尾仁物流企画部長は、加工食品物流の現場において1カ月で15時間以上の待機時間発生件数が330件あり、納品できず持ち戻ったのは66件など実態を明らかにし、附帯作業も動画を交えて説明。その上で労働環境を改善する翌々日配送の意義を説明した。
 加工食品分野は、標準化アクションプランを踏まえた伝票電子化、外装サイズ標準化などここにきて動きが活発化しており、製・販・配による物流効率化が着実に前進しているのは確かだ。
 掘尾氏は翌々日配送の浸透へ「運賃などインセンティブは」や、今後物流効率化を図る上で翌々日配送が「サービスレベルを落とす事例といえるか」との構成員の質問に対し「押しつけではなく、すべては物が届かない発想から。メーカー、小売り、卸トータルで進めるもの」「これまでがいわば行き過ぎたサービスで見て見ぬふりをしてきた」と述べ明確に否定した。
 17日の会合でもJAが青果物物流の現状において手荷役が中心で、待機発生と輸送側の荷役作業の発生が改善しなければ、運べないリスクが顕在化すると警鐘を鳴らす。
 菅新内閣の大きな目玉でもあるデジタル化。人手不足で労働環境の改善が進まない物流を持続可能なものにするにも、デジタル化をいかに迅速に進めるかが問われる。そのためにも、ものが運べなくなる危機意識を共有し標準化に粘り強く取り組む姿勢が不可欠だ。