さらなる進化に期待

全日本トラック協会の坂本克己会長が2期目を迎えるにあたって記者会見し、新時代に向けてさらなる進化を目指すと抱負を述べた。令和の新時代にふさわしい業界発展を見据えるその気概は心強い。
坂本会長は「現場で汗を流すトラックドライバーが自らの仕事に胸を張り、誇りを持てる仕事にすること」と常に主張してきた。
この強い思いが、トラック運送業の労働環境改善への動きを一気に押し進めた。昨年12月に議員立法で改正貨物自動車運送事業法が成立、1日からは荷主関連部分が施行された。標準的な運賃告示制度の導入も早ければ年度内施行の運びである。
2年前の会長就任時、総会あいさつで「現場で働く人々にとって、豊かな労働環境を実現することを目指し、ドライバーの幸せに全力を尽くす」と所信を表明。これに向けて「労働時間が短縮されても、賃金が下がっては意味がない。効率の良い仕事をし、生産性向上の果実を労働条件改善に振り向ける必要がある」と働き方改革の推進を方針の第一に掲げた。
今般の改正事業法については「新しいマーケットを見据えシステムなどを開発、導入し、常に創意工夫する全国の皆さんの努力のおかげ」と、この間の現場の動きが反映されたものと指摘する。
生産性向上、効率化に向けても、坂本会長が強調してきた「道路改革」で重要物流道路の指定が始まった。トラックが走りやすい道路を整備、物資輸送に災害時緊急物資などスムーズに運べるよう環境整備が進んでいる。
こうした中での2期目。「業界が先んじてマーケットが何を求めているか。新たな時代でAI、IоTの活用も進む」と新たな時代への筋道を示す。そのためにも過当競争から公正競争へ、そして適正な運賃収受は必要と、あらためて改正事業法の意義を強調する。
一般論としてトラック運送事業は労働時間が全職業平均より約2割長いにも関わらず、年間賃金は約1~2割低い。ドライバーが普通に働けば世間並の給料をもらえ、安心して働ける――そうした姿を望むが、2期目にあたって坂本会長が話す〝進化〟はより高いレベルに目を向けているようだ。多くの人がトラック運送事業で仕事を希望するよう魅力ある業界にすることだ。
業界の発展、進化は何より現場が元気であること。さらなる高みを目指し、現場に活力を与えてくれる坂本会長の手腕に期待したい。