コスト吸収する取り組みを

6月の国内景気は「輸出の停滞や高水準で推移するコスト負担が引き続き下押し圧力となり、後退局面入りの可能性がある」との声が聞かれる。帝国データバンクが3日発表した足元の景気動向調査によると、6月の景気DIは前期比0・3ポイント減の45・1で、7カ月連続で悪化した。
米中貿易摩擦を背景とした中国景気の減速などが輸出の停滞を招き、製造業の悪化基調が継続した。人件費や原材料費、輸送費の負担が高水準で推移したうえ、大阪での20カ国・地域首脳会合(G20サミット)などが響き、域内地域を中心に物流や工事関連が低迷した。景気DIが7カ月連続で悪化したのは、2009年2月(12カ月連続)以来、10年4カ月ぶりだ。
「運輸・倉庫」業界の景気DIは、前月比1・1ポイント減の45・6と、2カ月連続で悪化している。輸出向けなど製造業の出荷量減や建設関連の荷動き停滞を背景に、トラック運送や倉庫が落ち込んでいる。燃料価格の低下は好材料ながらも、人手不足を背景に人件費の高値での推移は引き続き負担となった。
米中貿易摩擦の深刻化などを背景とした中国向け海上輸送の停滞などを受け、港湾運送や内航船舶貸渡、組立こん包も悪化した。また、G20サミット開催にともなう交通規制も響いた。
岩手県で第52回定期大会を開いた運輸労連の難波淳介委員長は「(10年前の)リーマン・ショック当時、手を組んで危機に立ち向かったのはG7首脳だったが、(今回の)G20首脳からは自国第一主義・保護貿易の流れに対峙する姿は見えない。G20サミットでありながら、最大の関心事は、米国のトランプ大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談だった」と、大会の冒頭あいさつで触れた。
トラック運送事業は一般論だが、景気動向に影響を受けやすい産業特性を持っているといわれる。米中貿易摩擦などへの対応で、国内景気動向の先行き不透明な状況にあることは確かである。
ただ、TDB調査によれば、運輸・倉庫業界の6月販売(運賃・料金)単価DIは54・8(前月55・5)と健闘している。日通総合研究所が公表した一般トラックの運賃・料金動向指数は19年4‐6月が43(速報値/1-3月は39)で、7-9月見通しも43を予想している。
トラック運送業界で、多発する労働災害の防止、長時間労働の改善・是正には、原資となる運賃の適正が必要だ。コスト吸収する運賃・料金に向けた取り組みに期待したい。