〝標準的な運賃〟を有効に

企業の決算発表を延期するケースが相次いでいる。新型コロナウイルスの影響で業務に遅れが生じているようだ。2月期発表企業では今期の見通しが公表できないところもある。手探りの状態が続いている。
事業環境は昨秋の消費増税から暖冬、コロナウイルスと景況が一気に下降した。3月期の業績にどこまで影響されるかだが、さらに今年度は先が読めない。
トラック運送業は構造的には人件費、燃料費のコスト増に対し、適正運賃収受の継続による単価上昇が見られるところは業績改善の傾向にある。
全日本トラック協会がまとめた経営分析報告書(2018年度版)では、運賃の単価改善の継続で売上高は伸長し、燃料費や人件費の増加を吸収、営業・経常損益はともに改善に転じた。
必要人員を確保できないことから実働率は15年度まで悪化していたが、賃金引上げなど処遇改善による人材確保に努め、実働率は総じて改善傾向が続いている。
足下を見ると燃料価格については、店頭軽油価格が20日時点12週連続の値下がりで2年9カ月ぶりの安値。資源エネ庁によると、原油の需要の落ち込みは減産の量を上回るとの指摘もあり、値下がりは続くとみている。
一方で人手不足は続き、さらに働き方改革の推進で人件費に関しては大きなコスト要因になる状況が続く。離職率を低下させ、効率的に人材を確保するために、賃金の見直し、各種手当の新設・増額など人件費水準は一段と上昇することが見込まれ、増収に向けた取り組みが強く求められる。
こうした中でコロナ危機が経営に重くのしかかる。緊急事態宣言の範囲が全国に拡大され、営業活動の縮小や休止対象が各業種・企業で広範囲になり、業績への影響はこれまで以上に表面化されるだろう。
トラック運送業も品目によっては一定の荷動き低下を見込んだ上での事業計画を迫られるところだが、人材確保と適正運賃収受は継続して取り組まなければならない。
その観点からも24日に告示された「標準的な運賃」が果たす役割は大きい。運輸審議会から原案通り答申を受け、業界が求めていた使い勝手の良い制度として、荷主交渉に活用できるよう行政の丁寧な支援、フォローアップが求められる。
トラック運送事業者が持続的運営へ確実に収益を上げるにも、適切な対価を収受できる環境整備が重要だ。取引適正化は待ったなしの状況に変わりはない。