トラック倒産が増勢に

2021年度の道路貨物運送業の倒産件数は、東京商工リサーチ(TSR)調査で3年ぶり、帝国データバンク(TDB)調査では8年ぶりに前年を上回った。コロナの影響が長期化しており、トラック倒産は増勢に転じている。
国や自治体による資金繰り支援や雇用調整助成金などの活用で破綻が回避され、倒産件数は抑制されていた。しかし支援効果も薄まり倒産件数は21年度下半期から増加傾向にある。
全業種の倒産件数は引き続き減少傾向だが、状況をみると、支援策を利用した後に経営破綻したケースが急増している。最近では事業継続に必要な追加融資が得られず破綻を余儀なくされるケースも散見されるなど「今後はコロナ収束のタイミングが中小零細企業の先行きを占う」(TDB)とみている。
トラック倒産に関して、TSRの調査では、負債1億円未満が6割超と、小零細規模が中心であることや、後継者難が約7割を占めており、後継者が見つからず先行き見通しが立たずに事業継承をあきらめるケースが増えている。また、見過ごせないのが、コロナ関連倒産が前年より倍増したことで、20年度が全体の1割超だったのに対し、21年度は2割超と高水準にある。
さらに足元の燃料価格をはじめとするコスト増や、物流の〝2024年問題〟への対応は、とりわけ体力の弱い中小零細事業者の経営を大きく圧迫する。
TDB調査では21年度の倒産件数が全体では56年ぶりに6000件割れとなる中で、7業種中、前年を上回ったのは「運輸・通信業」のみ。うち、道路貨物運送業は前年比16%増、直近の1-3月は33%増である。燃料価格の上昇も直接的にトラック運送業の経営を直撃する。
コロナ禍の事業環境も3年目になる。特需とされる分野も2周りを過ぎ今後はその反動も考えられる。この間、しっかりとウイズ・コロナ、アフター・コロナの体質をつくり強い事業基盤を固めているところもあるが、事業規模間での格差拡大も懸念される。
中小零細事業者が多くを占めるトラック運送業界ではもはや自助努力の限界は超えている。
トラック運送業界は国民生活と経済のライフラインとしての機能を果たす。物流を止めないためにも、足元の燃油高騰に苦しむ事業困窮者への迅速な対策はもとより、長期化するコロナ関連支援策の拡充も不可欠だ。