「適正運賃収受」へ行動おこす

燃料高騰の販売価格への転嫁が進まない。帝国データバンクによると、3月の運輸・倉庫業界の仕入れ単価DIは過去最高水準となったが、販売単価DIは横ばい状態だ。燃料のほか、車両やタイヤ、部品資材などにも値上げがみられ、厳しい収益環境に置かれている。
全日本トラック協会は、燃料価格高騰対策本部を設置し迅速に諸施策を講じている。国に対する要望とともに、荷主・元請には不当な運賃・料金の据え置きがコンプライアンス違反の可能性があること、一方でトラック運送事業者にも、適正運賃収受や燃料サーチャージの交渉を進めることを、関係専門紙を通じた広報も含めて効果的な周知策を図っている。
交渉に応じない荷主などの情報について、国土交通省や公正取引委員会など関係先に相談窓口が置かれており、国交省によると燃料高騰に関する相談件数はここにきて増え、荷主対策深度化における「働きかけ」に該当する案件もみられるという。運送事業者からの情報提供を促したい。
価格転嫁については素材やエネルギー系の川上が先行し、物流や末端の川下は時間を要する傾向だが、その影響が長期化しているだけに、即効性ある対策が求められる。
物価は今後も緩やかな上昇が続くと予測され家計への負担は増す。トラックの今春闘では前年を上回る増額回答が聞かれるが、さらに労働環境改善に向けて、その原資となる、適正運賃収受を躊躇なく進めていく必要がある。
TDBによると、3月の一般景況は「好悪両面の要因が顕在化した中で下落傾向が停止し、わずかに上向いた」とし、今後も「下振れリスクを抱えながらも人出の増加などで緩やかに上向く」と見ている。コロナ感染症の動きは予断を許さないが、人流が戻るのに伴い物量は拡大する。足元は厳しいが、荷主・元請への転嫁対策についてしっかり行動をおこすことで先は見えてくる。
こうした難しい状況下だが物流業界は今年も多くの新入社員を迎えた。
コロナ禍においても社会、生活に不可欠であるエッセンシャル事業として、物流業界への関心は高まり、そこで自分の力を発揮したいと判断をした人も少なくないはずだ。
新しい世代の考え、感性への期待や、逆境を乗り越え果敢に挑む姿勢が経営トップの訓示からも聞かれる。新入社員へのメッセージであるが、経営においても現下の状況に怯むことなく今を正念場ととらえたい。