外国人材、取引適正化で措置、倉庫業界
備蓄米出庫に支援要請
5月28日に開かれた自民党の物流倉庫振興推進議員連盟総会で、倉庫関係団体が外国人材の活用や、備蓄米の緊急出庫で発生した逸失保管料への支援措置などを要望した。国土交通省からは特定技能・育成就労制度への「物流倉庫分野」の追加へ、12月に予定される閣議決定へ検討中であることや、倉庫業界の取引適正化へ標準倉庫委託約款の改正案を審査中であるとの説明があった。議連総会では冒頭、浜田靖一会長が、「課題が多々ある中、とくに特定技能・育成就労制度への追加について国の調整状況をよく聞き対応したい。足元では備蓄米の放出について定温倉庫業界の要望をうかがい意見交換したい」と述べた。日本倉庫協会の藤倉正夫会長は、外国人材の活用について「人手不足は常に顕著で、近い将来さらにひっ迫する。解決策の1つに外国人材の活用を進めたい」とし、倉庫作業の特定技能・育成就労産業分野への追加について本年内の実現へ支援を求めた。税制改正では今年度末で期限切れとなる倉庫税制を念頭に「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」のとりまとめを踏まえ、適切な支援制度の措置を求めた。日本冷蔵倉庫協会の浜田晋吾会長は、特定技能への追加や税制改正要望とともに、予算編成では脱フロン・炭素化推進事業の継続と物価上昇を反映した増額確保などを要望した。国交省の鶴田浩久物流・自動車局長が物流・倉庫政策の動向を説明。特定技能・育成就労制度への追加では有識者会議の議論を経て、閣議決定に向け、出入国在留管理庁、厚生労働省と連携して検討する。先月20日に開催された検討会では物流倉庫がリネンサプライ、資源循環とともに追加案に示されている。また、倉庫業界では大半の企業の寄託契約で、国交省が定めた標準約款が使用されているが、制定(1960年7月)以降に実質的な改正は行なわれておらず、近年の業務実態や物流政策を踏まえた内容に改正する。具体的には、倉庫業者は寄託者に対して、トラックの車両内での手荷役や仕分けなどの附帯業務への対価や、荷役・荷待ち時間の増大につながる緊急の入出庫オーダーに対して別途料金を請求可能とする。また、寄託者と倉庫業者の取引で、FAXや電子データによる意志表示が有効であり、機器・システム障害が生じた際に、倉庫業者が寄託に係る業務を一部拒否可能とする。その他、既存の規定で曖昧または不十分であるものについて規定を明確化。6月にもパブコメを実施し、8月末に告示予定。
●備蓄米放出「東京ドーム8個分」空く
一方、備蓄米放出について、全国定温倉庫協同組合の太宰榮一理事長が「今回の政治判断による備蓄米の放出で、保管体制を支えてきた定温倉庫の多くが倒産しそうな状況にある」とし、買い戻される備蓄米を受け入れ保管する倉庫会社に対し、入庫・名義変更時に「荷待ち経費」として少なくとも月額630円/㌧の支援を要請した。本来、大規模災害や著しい不作の事態でのみ放出する条件が「想定しない放出」により、96万㌧の在庫のうち61万㌧が放出。全国約10万4000坪程度(東京ドーム8個分)の冷却機能付き備蓄用定温倉庫が空いた状態で逸失保管料の補償もなく、「このままでは備蓄米保管倉庫は消えてしまう」と窮状を訴えた。農林水産省の平野賢一農産局農産政策部貿易業務課長は「倉庫業者の現状を踏まえ、どのような対応が可能かしっかり検討していきたい」とコメントした。議連では備蓄米の緊急出庫で発生した逸失保管料について、月額1万㌧あたり750万円の支援措置を講じることを緊急決議に盛り込んだ。