物流革新の新機軸を、次期大綱検討会が初会合

30年度輸送力不足に対応

次期「総合物流施策大綱」(2026~30年度)の策定に向け、今後の物流施策の在り方について提言を得るため、国土交通省、経済産業省、農林水産省は8日、有識者検討会の初会合を開いた。検討の視点として、①2030年度に想定される輸送力不足への対応、②国際競争力の強化、③災害等の有事への備え――を示した。計8回の会合により、11月にも提言を取りまとめる。「総合物流施策大綱に関する検討会」は、有識者、業界団体、事業者関係者など31人で構成。根本敏則敬愛大学特任教授を座長に選任した。根本座長は冒頭あいさつで、「28年前に策定された第1次大綱に荷主という言葉は8回しか出なかったが、現行の大綱は46回。改正物流法にはすべての物流事業者と荷主に物流効率化の努力義務が課せられる。新しい大綱は当然この路線に沿ってまとめることになる。検討会メンバーも物流事業者、荷主半々であり、ウインウインの関係を築けるよう議論を深めてほしい」と求めた。事務局が示した3つの視点のうち、輸送力不足への対応では、現行の政府計画の達成状況、施策効果を踏まえた物流革新の新機軸の検討とともに、経済動向や物流需要の変化などを反映した輸送力見通しを再検証する。物流革新の新機軸には、「サプライチェーン全体の担い手確保・処遇改善」、「イノベーションに対応する物流産業全体の構造転換」、「全国レベル・地域レベルの輸送体系の再構築」、「産業界・自治体等の役割分担や連携体制の確立」、「消費者1人1人の一層の意識改革・行動変容」を挙げる。
●24年問題の現状確認を
有識者のコメントでは「幹線輸送の自動化など、国民にも物流が変わったと見られるように」、「義務化も含め、踏み込んだデジタル化を」など物流革新への考えや、「引き続き荷主の意識をどう改革するか」、「24年問題の現状確認を」など聞かれた。24年問題で実際に輸送力不足が発生したかの発言も多く聞かれた。日本ロジスティクスシステム協会の北條英理事によると「マクロ的には運べたと推察する。リードタイムを延ばしたところが多いとみるが、時期、地域、品目で異なる」。トラック関係では馬渡 雅敏松浦通運社長(全日本トラック協会副会長)が「30年までに中小事業者が生き残れなければ結果、運べなくなる」との危機感を述べ、適正運賃収受が不可欠であることや改正物流法の周知徹底などを求めた。6月中旬の次回会合では現行の大綱も含め進捗状況のフォローアップを行う。以後、構成員のプレゼン、論点整理などを行い、11月開催の第8回会合で提言を取りまとめる。これを基に政府が次期大綱を策定する。