投函商品から協業 、JP ヤマト

両社経営資源を有効活用

日本郵政、日本郵便(JP)と、ヤマトホールディングス、ヤマト運輸は19日、物流の課題解決と持続可能な物流サービスを推進するための協業に関して基本合意したと発表した。その第1ステップとして、メール便、小型薄物荷物の投函商品で協業に着手する。①両社の経営資源を有効活用し顧客の利便性を向上する輸送サービスの構築と事業成長、②相互のネットワークやリソースを共同で活用し2024年問題や環境問題など物流業界が抱える社会課題の解決が目的。まず、ヤマト運輸が「クロネコDM便」を2024年1月末で終了、日本郵便の「ゆうメール」を活用した新サービス「クロネコゆうメール」(仮称)として取り扱う。ヤマト運輸が荷物を預かり、日本郵便の引受地域区分局に差し出し、日本郵便の配送網で届ける。さらにヤマト運輸は10月から「ネコポス」のサービス提供を1部地域から順次終了、日本郵便の「ゆうパケット」を活用した新サービス「クロネコゆうパケット」(仮称)に切り替える。同様にヤマト運輸が荷物を預かり日本郵便の配送網で届け、24 年度末を目途に全国対応とする計画。同日記者会見した日本郵政の増田寛也社長は、コスト上昇や人手不足など物流の厳しい事業環境に加え、「ECが生活基盤としてますます重要な役割を担い、荷物の出し手と受け手の要望も多様化し、安定した物流サービスの持続的な提供」を課題にあげ、「両社の物流ネットワークは世界に誇るべき社会インフラの機能を備えており、一層の関係強化を図る」との考えを示した。ヤマトHDの長尾裕社長は「97年からポスト投函サービスの領域に進出し、市場形成に一定の寄与ができた。24年問題をはじめ様ざまな課題や機会を鑑み、この領域で最も優れたネットワークを有する日本郵政グループとの協業を通じて持続可能なビジネスの構築とお客さまの利便性向上を両立させたい」と述べた。両社の経営資源では2t・4tトラックを約3万5千台配備し、その95%にクール設備を完備するヤマトグループのネットワークと、2輪約8万2千台・軽4輪約3万台を配備するJPグループのネットワークのそれぞれ強みをうまく組み合わせ、新たな顧客サービス、価値創造と課題解決に繋げる。
●広範な領域で協業を
JPはグループ中期経営計画で共創プラットフォームの強化を掲げている。業績面では今回の投函商品の協業で取扱い数量の拡大とヤマトからの受託料が入る。直近実績では年間でDM便約8億個・500億円超、ネコポス約4億個800億円弱の合計1200億円、そのうちの受託料が見込まれる。ヤマトは中期計画でネットワーク構造の刷新、ビジネスモデルの変革に着手している。長尾社長は「主力は2tのネットワークであり、経営資源を有効活用する中で投函商品は得意とするネットワークに依頼するのが自然な流れ。2つのサービスも品ぞろえは維持しながら協業によりさらに良いサービスを構築したい」と期待を示す。ヤマト運輸の鹿妻明弘専務執行役員は「投函事業は協業の第1ステップ。クール設備の利用や郵便ポストの有効活用、飛行場カウンタービジネスや郵便局での受け取りサービスの協業、幹線輸送の協業拡大など考えられる」と述べ様ざまな領域で新たな協業を検討していく。

左から長尾裕ヤマトHD社長、増田寛也日本郵政社長、衣川和秀日本郵便社長(19日記者会見)