適切な価格転嫁途切れずに

全日本トラック協会がまとめた4―6月期「トラック運送業界の景況感」によると、判断指数は1―3月期から1・3ポイント悪化し、マイナス20・0となった。2024年10―12月期のマイナス18・7から小幅だが2期連続で下降し、7―9月期も1・8ポイントの悪化見通しと上昇気配に乏しい。
一般貨物が輸送数量、運賃・料金水準とも悪化傾向だ。輸送数量は24年10―12月期、25年1―3月期とプラス圏内だったが、4―6月期はマイナス9・9、7―9月期見通しではマイナス13・7と停滞する。
運賃・料金水準はプラス圏内だが下げ幅が大きい。24年7―9月期の47・2をピークに3期連続で下降し、4―6月期は21・0、7―9月期では12・0の見通し。
特積貨物は輸送数量が24年1―3月期を底に5期連続で上昇、プラス圏内で7―9月期も増加見通しだが、運賃・料金水準は4期連続の上昇から4―6月期は下げ、7―9月期も下降見通し。
コスト上昇分の価格転嫁は一定の進捗をみせるが、直近では足踏み状態ともとれそうだ。燃料価格の高止まりや物価高による輸送原価の上昇分を十分転嫁できない状態が続いている。
規模別では、4―6月期の景況感は大規模企業がプラス16・3、中規模がマイナス23・0、小規模がマイナス27・1と判断指数に開きがある。不況が長引くほど小規模事業者は体力を消耗する。ただ、トレンドは同じで、24年10―12月期以降はそれぞれゆるやかに下降。7―9月期はいずれも下降見通しである。
上場物流企業の4―6月期決算をみると、新規案件の獲得やM&Aによる連結効果も含め、増収を確保したところが多いが、利益面では減益も目につく。燃料価格をはじめ様ざまなコスト負担が収益を圧迫する。それでも人件費や傭車費など上昇分は織り込み済みで、減益企業も、構造改革や先行投資費用なども含め概ね期初予想通りの着地も多く、下方修正は少ない。
原価の上昇に、物価高による個人消費の低迷と先行き懸念を抱える。米国関税政策では各企業も動向を静観する状況で不透明感は強まり、業績予想の判断も慎重だ。
コスト構造の見直しも限界があり、収益確保には適正運賃・料金収受に粘り強く取り組むことに尽きる。原価上昇分の価格転嫁を途切れなく実行するとともに、付加価値追求によるプライシングの適正化に努めたい。