負のスパイラルから脱却を

厚生労働省が16日に発表したトラック、バス、タクシーなどの自動車運転者を使用する事業場に対する2015年の監督指導結果で、トラック運送業の「改善基準告示」違反率は69.9%と悪化し、この6年間を見ても悪化傾向にあることが分かった。

違反率をみると、バスの54.4%、ハイヤー・タクシーの42.8%に比べ、トラックの高さが目立っている。トラックの主な違反事項を見ると、最大拘束時間(違反率55.5%)、総拘束時間(同45.1%)、休息期間(43.7%)など、いずれも3業種のなかで最も高い。

拘束時間や運転時間について、事業者からは「積み込みや荷卸し場所が複数あるため運行時間が長くなり、荷主先での手待ちの発生で拘束時間が長くなっている」「九州の場合、改善基準告示を順守して、関東に翌日着とすることは物理的に不可能」といった声が聞かれる。

連続運転時間、休息期間については「渋滞や事故などにより計画どおりに運転できない」「4時間ごとにタイミングよく休憩できる場所がない。高速道路のSA・PAなどの駐車容量が足りない」といった切実な声もある。

改善基準告示は、トラック、バス、タクシーなどの自動車運転者の長時間労働をはじめとする労働条件の向上を図るため、労働基準法では規制が難しい拘束時間や休息期間、運転時間などの基準を大臣告示として制定したものだ。

告示であるため違反に対する罰則はないが、国土交通省では過労運転防止のための基準として用い、基準違反を行政処分の対象としている。昨年は、北海道と愛知県のトラック運送事業者が改善基準を著しく順守していなかったとして、30日間の事業停止処分となった。

国交省は昨年9月1日から、トラック運送事業の改善基準告示違反に関して地方労働局からの通報を受けた場合、監査を行う前に適正化事業実施機関による改善指導を行い、早期に違反状況を改善する仕組みを導入した。また、トラック運転者のフェリー乗船中の扱いについて、乗船時間を原則として休息期間として取り扱う緩和策も実施された。

改善基準告示は、トラック運送事業者が守るべき労働時間のルールである。だが、違反率を見る限り、ドライバーの長時間労働改善への兆しは見られない。むしろ悪化しているのは、深刻化するドライバー不足の影響によるものか。真剣に改善に取り組まなければ、労働力不足→労働条件悪化→労働力不足という負のスパイラルから抜け出せない。