現状値をステークホルダー共有

2026年度からの次期総合物流政策大綱の策定に向け6月から検討会が始まっている。併せて、現大綱(21―25年度)のフォローアップも行われ、先日の第3回検討会では、KPI(重要業績評価指標)のうち、「目標を達成するためにさらなる取り組みが必要」な指標について、その要因と今後の取り組み方針を公表した。
KPIを設定してフォローアップを行うのは現大綱から。施策の推進によって、どの程度大綱で掲げた目的が達成されているかを定量的に把握するためだ。国のみならず、物流事業者、荷主、一般消費者など全てのステークホルダーが定期的に確認し、施策の調整を図ることが重要との考えである。
フォローアップ会合を22年9月、23年8月に実施し、目標値に対する現状値を確認。その後、次期大綱の検討会において進捗状況を整理し、前回の第2回会合で公表したところ、KPIの全40指標中、28指標が「目標を達成するためにさらなる取り組みが必要」との評価だった。構成員の意見を踏まえ、第3回会合でその要因と今後の方針を示した。
KPIの項目により要因は様ざまだが、この間の改正物流法施行や関係する措置、コスト上昇分に対する価格転嫁の動きなど、国の一連の施策に言及するものが多い。「事業者の取り組みや意識の改善の十分な定着には至っていない」、「現場での実効性は限定的な状態」、法施行も「実効性の確保には一定の時間を要する状況」といった内容だ。
現大綱の策定後、24年問題に直面し、物流革新関係閣僚会議が発足、法改正、規制的措置が実行され、その途上にあるのは確かだ。今後も改正下請法施行やトラック適正化2法が控える。今回示した要因・方針は、次期大綱策定とも大きく関わる。検討会座長の根本敏則敬愛大学教授は「それだけ伸びしろがあること」と前向きにもとらえる。
KPI自体の設定の仕方も今後の検討課題になるだろう。目標値と現状値の乖離に対し、検証を行い新たな方策を見出す。そのためにも目標達成の利点を明確にし、関係者が着実に物流改善を実感できるよう、現状の進捗に目を向けてもらうことが肝要だ。
物流の課題解決には、物流事業者、荷主、一般消費者、全てのステークホルダーの連携、協働による継続的な取り組みが不可欠だ。現状値をステークホルダーでしっかり共有する。そこからより有効な解決策、新たなヒントも生まれる。