円滑な対応で存在感示す
政府所有米穀の急な放出により、備蓄米を保管する定温倉庫事業者は保管貨物を失い、収入の激減に直面する。5月28日の自民党物流倉庫振興推進議員連盟総会で、全国定温倉庫協同組合の太宰榮一理事長が「このままでは備蓄米保管倉庫は消えてしまう」と窮状を訴え、支援措置を要請した。
備蓄米は通常は「大規模災害」、「著しい不作」でしか出荷しないルールであり、これを前提に事業者は4~5年の長期保管契約を行っている。しかし今回、政治的な判断で急遽、放出が行われた。
速やかに出庫に対応するが、原則である「先入れ先出し」に反して、2024年度産から出荷する異例の「後入れ先出し」でのオーダーが、さらに現場に混乱をもたらし重荷になったという。
4~5年の保管が2~3カ月の保管で出庫され、東京ドーム8個分が空いた状態であり、「条件変更のある備蓄米はもうやれない」との声も聞かれる。今回の緊急出庫は政治判断によるものであり、皺寄せが出た倉庫業界に対し責任ある政治判断で救済してほしいと切望する。
倉庫議連では要望を受け、備蓄米の緊急出庫で発生した逸失保管料について、月額1万㌧あたり750万円の支援措置を講じることを緊急決議に盛り込んだ。
事業者の「もうやれない」の声からは、備蓄米から他の民間貨物の保管へとシフトすることも考えられる。米の保管ノウハウを有した他の倉庫を新たに確保することは容易ではない。持続可能な食糧備蓄政策の面でも早期の措置が望まれる。
政府が随意契約で放出する備蓄米の小売業者への引き渡しも始まり、配送において迅速な対応が求められる。人手不足を抱えるトラック業界の動きが注目される。
小泉進次郎農林水産大臣は5月28日に中野洋昌国土交通大臣を訪ね、備蓄米の迅速な出庫とともに、配送するトラックも滞りなく手配されるよう、倉庫、運送業界への働きかけを求めた。
中野大臣は配送に関して体制を作り、業界団体にも迅速な対応を要請するなど最大限協力すると述べた。30日には本省と運輸局職員からなる「備蓄米物流支援室」を設置、物流事業者の手配を支援する。
物流は国民生活と地域の経済を支える。非常時における円滑な対応は公器としての大きな存在感を示す。要請に応えるためにも、国からは取引適正化措置も含め継続的な支援が求められる。