健全な発展への構造改革

トラック運送業の事業許可更新制の導入や「適正原価」を規定する貨物法改正と、これを担保する新法が4日の参議院本会議で可決、成立した。全日本トラック協会の坂本克己会長が昨年12月5日の理事会で「現場のドライバーの経済的、社会的な地位の向上へ新しい法律を我々の力でつくる」とその構想を明らかにして半年で法制化を実現した。
坂本会長はこの6月で退任を表明している。2018年の貨物法改正を「ホップ」、4月に1部施行した物流2法改正を「ステップ」、今回を総仕上げの「ジャンプ」と称し強い姿勢で臨んだ。その思いは「ドライバーが自信と誇りを持てるよう処遇を改善し、社会に貢献すること」である。
90年の物流2法改正でトラック運送事業の新規参入が免許制から許可制に、運賃が認可制から届出制となった。この規制緩和が必然的に過当競争にならざるを得なくなり、「悪貨は良貨を駆逐する」懸念を生み出す。
トラックドライバーの年間所得額は全産業平均と比較して大型で約4%、中小型で約14%低いのが実態であり、今回の法改正はましさく「社会のため、消費者のため、ドライバーのため」である。許可更新制の導入は苦渋の決断でもあったが、真面目な事業者、現場のドライバーが仕事に自信と誇りを持てる環境をつくる。そうした訴えが広く共感を得た。
改正法に盛り込まれた5年ごとの事業許可更新制や、国土交通大臣が定める「適正原価」の規定はドライバーを適切に処遇しているかを判断する措置となる。適正競争の推進により、ドライバーの地位向上と労働条件の改善、事業者の効率経営が図られ、それが安定的な物流の確保につながり、国民経済の健全な発展に寄与する。トラック運輸産業全体の地位を高めるものだ。
改正法を担保する新法には更新制の実現へ、必要な体制を整備する基本事項が定められる。物流に関する施策の総合的、集中的な推進を図るため、物流政策推進会議を設置するなど、今後具体的な内容を検討していく。
トラック運送事業者がやるべきことは変わらない。足元では適正運賃・料金収受を徹底すること。先般の下請法改正を踏まえた価格転嫁と、その運賃上昇分を担い手の給与引き上げに確実に反映させていく。新たな法改正はこれを後押し、トラック運送業界そのものの健全な発展へ構造改革を図るものだ。