停滞感も付加価値で活路

帝国データバンク(TDB)によると、運輸・倉庫業界の4月の景気DIは前月比1・4ポイント減の41・9だった。2023年2月以来の低水準で、人件費や燃料費のコスト上昇に加え、とくに製造業や建設業のDI低下が荷動きに影響しているようだ。
「トランプ関税」による業績への影響や先行き不安から個人消費も伸び悩む。全体の景気DIも23年2月以来の低水準。自動車・鉄鋼関連では、輸出が停滞し、海外経済の減速や税関手続きの混乱も重なり、荷動きは低調だ。
先行きはどうか。TDBの国内景気見通しはこの1年は、「横ばい傾向」、「底堅く推移する」とのコメントが続き、実際に緩やかながらも回復基調だったが、今回は世界経済の不確実性が高まる中、「当面、弱含みで推移する」と下降に転じる。「トランプ関税」の警戒感と、物価高による消費低迷は物流の荷動きへの影響も避けられない。
小売業の直近の3月売上動向をみると、百貨店は2カ月連続の前年割れで、上昇を支えたインバウンドが3年ぶりにマイナスに転じた。スーパーは2カ月ぶりに前年を上回ったが、値上げ要素があり、節約志向から買い上げ点数の減少傾向は続いている。
宅配便3社の24年度実績をみても個人消費の停滞感がうかがえる。ヤマトホールディングスは宅配便3商品で19億6121万個、前年度比4%増だが、法人部門(大口法人)が7・7%増で、宅急便部門(小口法人、個人)は0・2%減。SGホールディングスはデリバリー事業の取扱個数で13億1700万個(4・1%減)、日本郵便はゆうパックで5億5845万個(2・1%増)だった。
EC化の進展で宅配便市場は競争環境が強まる状況でもある。個人消費が先行き不透明な中で法人顧客の取り込みなど需要を喚起するサービスの提供で物量拡大を図る方向にあるようだ。
ヤマトHDでは25年度の宅配便3商品の個数を前年度比0・6%減とした。
宅急便部門はニーズを捉えた商品・サービスで増販を図る一方、個数の減少は法人部門で適正なプライシングを進めることによる影響を予め想定した。付加価値に応じた適正なプライシングで平均単価を押し上げる。
トラック運送業界は事業適正化への環境整備が進行する。厳しい事業環境が続く中でも、需要喚起へ付加価値で活路を見出したい。