ウインウインの関係構築を

中野洋昌国土交通大臣と、荷主、物流業界関係者との意見交換会が15日に行われ、中野大臣からは法改正の施策が進むこの機運を逃さす、さらなる価格転嫁と賃上げへの取り組みを要請した。
具体的には、①下請法改正に関する十分な周知と施行前から早期の自主的な対応、②運送委託の際、実運送のコストを勘案した価格設定、③運賃収入の上昇分を担い手の給与引き上げに確実に反映――の3点。
これらは4月8日に中野大臣が坂本克己全日本トラック協会会長に直接要請した内容で、今回、陸・海・空の物流業界全体と、荷主業界関係者にも広く周知徹底を促した。
物流の持続的発展には、エッセンシャルワーカーであるトラックドライバーのさらなる賃上げが不可欠だ。その原資となる適正運賃・料金の収受へ、サプライチェーン全体でコスト上昇分の価格転嫁に動く。実運送事業者が適正運賃・料金を収受できるよう国は施策を進めており、その周知とともに確実に実行することが求められる。
意見交換会には荷主、物流団体関係者10人が出席し、業界側からも意見を述べた。中野大臣は、「いただいた意見を踏まえ、次期総合物流施策大綱を、物流産業全体が持続的に成長し、明るい未来を描けるよう、検討会で議論を重ねる」と次期大綱への考えを述べている。
次期総合物流施策大綱(2026~30年度)の策定に向けた有識者検討会が8日に立ち上がり、11月にも提言を取りまとめる。「2030年度に想定される輸送力不足への対応」が視点の1つとなり、物流革新の新機軸を検討していく。
初会合の事務局の説明では、物流革新の新機軸の切り口の1つに「サプライチェーン全体の担い手確保・処遇改善」を挙げている。30年度を見据えたイノベーション、DXの進展に期待がかかる一方で、持続的成長には安定的な人材確保へサプライチェーン全体が共通認識を持つことだ。
検討会の座長である根本敏則敬愛大学特任教授は、物流施策大綱における「荷主」の表記が第1次大綱で8回に対し現大綱では46回であることや、検討会メンバーの荷主、物流事業者の構成が半々であることを挙げ、「ウインウインの関係を築けるよう議論を深めてほしい」と求めている。
取引適正化を進め、サプライチェーン全体へ価格転嫁を波及させるにも、双方メリットのある関係構築が望まれる。