インフラ維持へ理解と協力を

物流は、水道やガス、電気などと同じ「社会インフラ」であり、維持するためには、多くの人の理解と協力が必要だ。ヤマト運輸の宅配便「総量抑制」問題を契機にこうした認識が広まっている。そこにはドライバー不足から物流が立ち行かなくなることへの危機感がある。

ネット通販貨物が想定以上に増え続けるなかで、新聞、雑誌、テレビなど多くのメディアが「物流危機」を語り、「荷物は増えても利益は増えない」という「豊作貧乏」状態を浮き彫りにした。ドライバーが昼休みも取らず15時間以上も働く長時間労働が常態化し、現場が悲鳴を上げていることも見えてきた。

宅配便はネット通販などにより日常生活に欠かせない「社会的インフラ」として存在し、世の中の注目を集めている。なかでも、ドライバー不足に拍車をかけているのが「再配達」である。

国土交通省によると、不在による宅配便の再配達率は19・1%で,約2割が再配達だ。ヤマト運輸の場合、2015年度の取扱個数は約17億3126万個で、その2割を再配達とすれば、3億4625万個増え、合計で20億7751万個を配達していることになる。ドライバーは3億4600万個も余計に配達している計算となる。

この再配達がコスト増と長時間労働など、生産性を低下させている。配達車両の走行距離の約4分の1が再配達で、この再配達に要する労働力は、年間9万人のドライバー数に相当する。

これを解決する方策として、いま注目されているのが「宅配ボックス」である。マンションに加え、コンビニエンスストアや駅などに「宅配ボックス」を設置する動きが加速している。

戸建て向け普及への取り組みも始まった。宅配ボックスの販売会社が自治体と共同で実施した実証実験によると、宅配ボックス設置前の再配達率「49%」が、設置後は「8%」へと大幅に削減された。

トラックドライバーは業界全体で不足している。東京労働局管内の有効求人倍率をみると、「自動車運転の職業」の2017年1月は、一般常用で3・48(職業全体1・72)、パート常用で5・38(職業全体2・17)。いかに不足しているかがわかる。

消費者に身近な宅配便に対し、企業間取引のトラック輸送は一般消費者との直接的な関係は薄いが、ドライバー不足は同じだ。社会インフラである「物流」を維持するためには、一人でも多くの人の理解と協力が必要だ。