さらなる行動変容を促す
国土交通省は、次期「総合物流施策大綱」(2026~30年度)の策定を見据え、物流の効率化、商慣行の見直し、荷主・消費者の行動変容を柱とする抜本的・総合的な施策を強力に推進する。来年度予算の概算要求では、これら物流関係で52億円を要求した。
商慣行の見直し、行動変容の対策で増額が目につく。来年4月の改正物流法の全面施行へ、荷主・物流事業者に対する規制の執行体制を整備する。トラック適正化2法の施行に向けた検討、調査も含まれる。
物流効率化、取引適正化へ荷主の理解が広がっているのは確かだが、事業者の規模や業種間でまだまだ開きがあるようだ。
日本商工会議所が会員企業を対象に行った調査では、物流効率化に前向きに取り組む企業は3割。中小荷主は依然として物流効率化に十分に取り組めていない。発荷主の4割が物流効率化に取り組む一方、着荷主では2割と、発着荷主間でも進捗状況が異なる。
改正物流法では今年4月から荷主、物流事業者への規制的措置が努力義務化されたが、日商調査ではその必要性は認識しても「取り組めていない」、「何をすればいいか分からない」との回答も3割超ある。
8月21日に行われた、次期物流施策大綱策定に向けた検討会では、先行して物流効率化で成果をあげる荷主の取り組み事例が多く聞かれた。規制的措置の周知とともに、こうした動きを広く中小荷主にも横展開していく必要がある。
改正物流法の全面施行では、特定荷主事業者に物流統括管理者(CLО)の選定が義務付けられる。
今回の概算要求には、荷主の行動変容について、CLОが主体となり、複数の荷主・物流事業者間のデータの可視化・共有化を図る施策を盛り込んだ。物流コストに応じた運賃・商品価格の設定や物量の平準化など物流改善を強く後押しする。
物流効率化の対策の1つにリードタイムの延長がある。先の大綱検討会の意見交換では、商品が遅れても値段が安ければ受け入れてもらえるか、エビデンスを得るべく、消費者へのアプローチが必要との意見も聞かれた。根本敏則座長は「消費者にも物流コストが見えるよう行動変容を促すことを大綱に書き込みたい」とコメントしている。
物流革新の「集中改革期間」として、従来にない対策を抜本的に講じていく中で、荷主、消費者の行動変容へさらに踏み込んだ施策が望まれる。