さらなる生産性向上へ

政府は運輸業など人手不足が深刻な12業種を対象に「省力化投資促進プラン」を2029年度まで集中的に推進する。デジタル支援ツールの活用、全国的な伴走型支援などを通じて、5年間で約60兆円の生産性向上投資を官民で実現する考えだ。
12業種は飲食業、宿泊業、小売業、生活関連サービス業、その他サービス業(自動車整備業・ビルメンテナンス業)、運輸業、建設業、医療、介護・福祉、保育、製造業、農林水産業。各業所管省庁が官民による取り組みの目標と具体策を公表する。
人口減少で労働供給制約が厳しくなる中で、中小・小規模事業者が成長し続けるため、集中的な省力化・デジタル化投資を後押しする。
「新しい資本主義実行計画2025年改訂版」の原案に29年度までの労働生産性の目標値が示された。運輸業は24年度比で鉄道18%、自動車(物流)25%、自動車(旅客運送)26%、水運22%、輸送用機械器具製造業21%、航空分野5%の向上を目指す。
運輸業はどの分野も人手不足が深刻化する。とりわけ自動車(物流・旅客運送)分野は中小・小規模事業者が多く、帳簿など紙での管理や、配車計画・運行ルートの手書き作成といったようにDX化が遅れている。
その一方で乗務員・管理者の業務負荷を軽減する運行管理、乗務日報自動作成、勤務管理のシステムや、配車アプリ、キャッシュレス決済の導入や、庫内作業を効率化する自動化機器において省力化を実現する優良事例もみられる。
省力化促進策として、こうした優良事例の横展開を具体化する方向だ。事業者への周知、サポート体制を確実に行い、ニーズのある事業者に支援が行き届くよう体制の整備が望まれる。
国土交通省が18日まで公募を受け付けている「中小物流事業者の労働生産性向上事業」(物流施設におけるDX推進実証事業)には、申請事業者が事業場内の最低賃金を3%以上または45円以上増加させる場合、補助上限を上乗せする措置を講じている。
人が集まり、魅力ある産業となるには、業務効率化や働き方改革のための自動化・機械化・デジタル化の取り組みが不可欠といえる。
先行き不透明な事業環境の中で、中小・小規模事業者が生産性向上、DXの推進に前向きに臨み、活路を見出せるよう、あらゆる情報発信や対話の機会が必要だ。