「人手不足」関連倒産に注視
今年上半期の企業倒産件数は前年同期を上回る約5000件と増勢傾向だが、トラック運送業は前年を下回った。
東京商工リサ―チ(TSR)によると、1―6月の企業倒産は4990件(前年同期比1・1%増)、4年連続で前年同期を上回り、上半期では2014年以来の水準となる。10産業のうち、7産業が前年同期を上回った。
一方でトラック運送業は146件(前年同期比24・7%減)で5年ぶりに前年を下回った。昨年1―6月が194件、前年同期比42・6%増と2024年問題に直面し大幅に増加した反動でもあろうが、中小・零細事業者もコスト上昇に対する価格転嫁の進展がうかがえる。
トラック運送業界は不況の影響を最も早く受け、好況の恩恵を受けるのは遅いと言われる。倒産件数は前倒しでありピークアウトととらえたいが、人手不足をはじめ先行き懸念材料は山積する。
トラックの倒産件数に占める「人手不足」関連倒産の割合は上昇している。TSRでは、ドライバー不足による受注減や人手確保への人件費増が、業績が落ち込んだ事業者に追い打ちをかける構図に変わりはないとみている。
トラック運送業とともに人手不足が深刻な建設業は倒産件数の増加が続く。帝国データバンク(TDB)によると、通年では12年ぶりに2000件台に到達する可能性もある。鉄骨や木材、住設機器など資材価格の急激な高騰が大きな打撃となり、売価に反映できない。加えて高齢化による求人難や人材流出により、自社で対応できない悪循環がとりわけ中小事業者の倒産件数を押し上げているという。
トラック運送業も燃料費の高止まりと人件費高騰が収益を圧迫する。それでも国の燃料高騰対策や適正運賃収受への一連の法改正など施策も後押しとなり、厳しい事業者は何とか持ちこたえているのが実情ともいえる。
厚生労働省が発表した5月の毎月勤労統計調査によると、「運輸業、郵便業」の1人当たり名目賃金は前年同月比4・9%減、4カ月連続で前年を下回った。
24年問題の対策として、物流の効率化に向けた荷主の協力など「物流革新」は前進するが、構造的問題は始まったばかり。少子高齢化で人手不足はますます深刻化する。賃金引き上げ余力に乏しい、中小・零細事業者の倒産リスクを引き続き注視する必要がある。