電動化で新たな価値創出を

ヤマト運輸が三菱ふそうトラック・バスの小型EVトラック「eキャンター」新型モデル900台の導入を発表した。「eキャンター」の2017年初代モデル発売からの累計国外590台・国内190台を上回る一括発注。電動化への関心が高まる中で大きなインパクトがある。
ヤマトグループは2050年温室効果ガス自社排出量実質ゼロ、30年で20年対比48%削減を掲げ、30 年までにEV2万台の導入を目指す。昨年8月から日野自動車のウォークスルータイプ(1トン)を導入したが、今回はラストマイル主力の2トン車。来年3月末にかけて順次導入し、今年度末のEV累計台数は2200台を見込む。
今回の900台は同社小型トラック全車両の2%と全体では小さいが、カーボンニュートラル実現へ大きな一歩といえる。
記者発表を行った高崎正観寺営業所(群馬県高崎市)では13日から3台が稼働した。太陽光発電で3割の電力を再生可能エネルギーで賄い、EVへの充電設備を整備した。今後の増築に伴い同所では100%再エネで補う考えだ。
ヤマト運輸はラストマイル拠点の集約化・大型化を進めており、併せて太陽光発電など再エネ設備の整備が可能な地域にはEVの導入を積極化する。今回のeキャンターもこれらが整ったところから導入する。電動化だけでなく、再エネ由来電力の活用やエネルギーマネジメントシステムの開発など、サステナブル経営への取り組みを強力に推進するものだ。
群馬県では昨年7月にNEDOの助成事業が採択され、EVの導入・運用、エネルギーマネジメントに向けた実証も行っているところだ。
今年6月には群馬県と「カーボンニュートラル実現に向けた共創に関する連携協定」を締結しており、再エネの利活用、エネルギーの地産地消や面的利用の取り組みを効果的、継続的に進める。事業者、地域双方の特色・強みを掛け合わせ、生活者、事業者、自治体の全てにメリットがある持続可能な社会を目指す。
災害時対応も含め物流事業者と自治体の協定締結も各地で相次いでいる。それだけ行政、地域からの要望、信頼も強い。
電動化はコストをはじめ様ざまな課題があるが、環境配慮のほかエネルギーマネジメントを活用、応用した新たな価値を生み出す可能性もある。全国展開する大手が先行して示すことは、地域に密着する物流事業者の地位をさらに高めるものだ。